〇崑崙遊撃隊を読む

 山田正紀です。

 自分では持っていないつもりでいたのですが、「火神を盗め」を実家に置きに行ったらありました。角川の初版ですから1988年です。

 解説のヨコジュンは、押川春浪の秘境冒険小説の正当な後継者と言いますが、作者本人は「ロストワールド」のパスティーシュという意識のようです。ロストワールドパスティーシュには田中光二のずばり「ロストワールド2」と言うのもありますが、まぁ一つの典型的なタイプの冒険小説なのです。

 魔都上海を出発点として、阿片中毒になった友人を救うために友人が溺れている女との縁を切らせようとする主人公。この女が、なんと伝説の崑崙から来た女だというのです。

 で、メンバーを集めて探検に行きますが、火神と同じく暴力のプロ1名(紅幇随一の殺し屋、ブラックウィドウ)、後は素人という例の編成です。

 こうなると、ブラックウィドウが最初の犠牲者になりそうなものですが、意外にしぶとく最後のクライマックスで日本軍特務工作隊の2人と刺し違える所まで活躍します。

 ちょっと「宝石泥棒」を連想させるのは、崑崙の正体が実は水流を神経系統とする異種知性だという謎解きです。割とちゃんとSF落ちしています。