KOS氏の訃報に接して

最初に訃報に接したときには信じられなかった。つい先日もGMTの新作「アレシア」のリプレイをアップされていたばかり。しかし、今日になって勤務先の大学の方からもオフィシャルな訃報が出たので事実と認めなくてはならなくなった。
KOS氏はもちろんこちらからもリンクを張っている「KOSのウォーゲームページ」のオーナーである。かつては「アレクサンドロスの遺産」や「ラヴェンナの戦い」をデザインされたゲームクリエイターでもある。
最近では本業の方が忙しく、「KOSのウォーゲームページ」で出版されたウォーゲームについて語る立場で活躍されていたが、その高い見識と、深い歴史知識の造詣に裏打ちされたゲーム評価は他を寄せ付けないものだったと思う。
KOS氏のゲーム評価は、あたかも歴史書を読み解くかのような独特のものだった。わたしの私見になるが、ヒストリカルゲームはゲームデザイナーがその史実をどう分析し評価したかの発露であるという考え方だったように思う。ゲームシステムはデザイナーがその戦いでもっとも重要な要素は何だったかを表しており、プレイヤーに与えられる自由度はその戦いで人為的に改変しえた要素は何であったかの考察であるというような考え方だ。
ゲームをそのように読み解くに当っては、プレイバランスやプレイアビリティはそれほど重視しておらず、極論すればプレイすることを前提としないゲームもありえるというスタンスだったかと思う。
かつてシミュレーション派とゲーム派という論争があったが、プレイを重視しないと言う点ではシミュレーション派のようにも見えるが、単純に戦闘序列などの精度を求めているのではなく、歴史事象の背後にあるメカニズムへの考察のようなもっと次元の高い部分でのシミュレーションに対する洞察があり、そうした分類の手の届かない高い所にいる存在だったようにも思う。
こういうことを書くと、「いやいやいしださん、わたしが考えているのは‥」と眼鏡の奥から優しい目で間違いを正してくれそうな気がいまもするのだが。このホビーに対する深い愛情と造詣を感じさせる独創的な高次元の意見をもう聞けないのかと思うと残念でならない。もっと色々なゲームの色々な角度での話しを聞かせてもらいたかった。
真にご冥福をお祈りしたい。
まだまだ書かねばならないことも多いので、時間の許すときにまた書き足していきたい。