○影のオンブリアを読む

bqsfgame2005-05-18

2003世界幻想文学賞受賞作。
昨今、ファンタジーでなくても良い現代的な主人公たちの冒険を延々と描く長大なシリーズも多い中で、390ページの一冊の中に異世界を紡ぎ上げていることに好感が持てる。
宮廷と市井、地下世界、そして影のオンブリアと重層化された世界が互いに関連しあって、また多数のキャラクターが思惑と陰謀を巡らして動き回るタペストリーになっている。直線的なストーリーや、確かに道具立てはファンタジーなのだが、構成としては必ずしもファンタジーでなくても良いものも近年は多い気がするので、良い意味でクラシカルだと思った。
作品のインパクトという点では同じ賞を受賞している最近読んだ「香水」や「奇術師」に比べるとマイルドで一段階印象が弱いようなところもあるのだが、それでも面白かった。
ちなみに先週末に娘がミルクを飲んだ後、割ともどすので、しばらく食後にタテ抱きしているようにしていたのだが、そのときに他に絵本もなかったので「影のオンブリア」を読み聞かせてやった。生まれて最初に読み聞かせてもらった本が「影のオンブリア」というのもなかなか凄いかも知れない‥(^o^)