○サンディエゴライトフットスーを読む

bqsfgame2006-01-15

1977年に42歳で若くして亡くなってしまったトム・リーミイの短編集。79年にアメリカでエリスン、ウォルドロップの追悼文を加えて発表され、85年にサンリオSF文庫から翻訳された。それも既に21年前とは恐ろしい。
この時期、期待の新人作家が相次いで亡くなり、不運の年だったという記憶がある。リーミイもその一人。個人的にはSFマガジンに当時、短編が相次いで出ていたスーザン・ピートリィが一番悲しかった。遊牧民と共生する新しい吸血鬼像を描き出した「草原の吸血鬼」、その続編の「スパリーンとコサックたち」のシリーズは、今後に期待していたものだ。そう言えば亡くなられたKOSさんもピートリィのファンだった。
話しがそれたが、リーミイはSFと言うよりはホラー系のライター。思えば77年当時のリーミイは新鮮だったわけだが、それから29年間にこのジャンルは多くの傑作が物にされ幾人もの巨匠が今ではいる。その意味では今になってから読むと、当時ほどには感心しないのも残念ながら事実。出版当時に読んでおくべきだったと後悔する作品になってしまった。
個人的には、「トウィラ」、「デトワイラーボーイ」、「琥珀の中の昆虫」などの人智を超えた怪異が出てくるものが好き。ラブクラフトあたりよりもマイルドで洗練されていて上品な感じがどこかするのがリーミイの魅力だろう。
タイプライターを打ちながら亡くなったというリーミイだが、彼がもし生きていたらホラーの大御所に列せられるようになっていただろうか。また、本作品集を読むと、ホラー以外の傾向のもの、ラファティを思わせる「スイートウォーター因子」あたりもあるので、もしかしたら変身をしてみせてくれたいたかも知れないと思う。当時も作品数が少ないにも関わらず非常に惜しまれた才能だったが、改めて本当に惜しいと思う。