○究極のSFを読む

最近、いろいろと本集の掲載作品がアンテナに掛かってきたので、再入手して全部を読み直しました。

SFのサブジャンル12について、そのサブジャンルの得意作家を指名して書かせたというアンソロジーです。

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企画としては面白そうですが、上手くまとまるかどうかいかにも危うい感じ。

「時間飛行士に捧げるささやかな贈り物」

タイムトラベルをPKディックに書かせたのは、ちょっと不思議な気がします。「タイムパトロール」のアンダースンが一番連想しやすいと思うからです。

しかし、結果から見れば非常に上手く行った作品が得られています。眉村卓の「トグシノ」と並ぶ、閉塞ループものの傑作になっています。巻末。

「われら被購入者」

アンダースンにはファーストコンタクトが割り振られており、非常に奇抜なファーストコンタクトのアイデアが描かれています。巻頭。

巻頭と巻末に良い作品が置かれているので、全体としての出来栄えはそこそこですが、まぁ恰好になっています。

「心にかけられたる者」

御大アシモフにはロボットテーマです。

ロボットテーマを突き詰めた人でないと書けないものを書いてくれていますが、これが究極のロボットSFかどうかは議論の余地があるでしょうか。

「ぼくたち三人」

ク―ンツです。SF作家とは呼びにくい人ですが、この人にミュータントテーマを割り振ったのは企画者の慧眼。ある意味で本人の得意なホラーとしてちゃんとして機能もしており集中の白眉。

「三つの謎の物語のための略図」

オールディスです。

サンリオで訳された「世界Aの報告書」の習作スケッチと言った所。オールディスの当該シリーズが、意外に長期構想を持って描かれていたことを示しています。