コマンド70号を入手

bqsfgame2006-08-23

今回の号は久しぶりに読み応えがあったというのが率直な印象。どこから語ったものか。
先ず、御大マーク・ハーマンのカードドリブンへの所見の記事から行こう。狭義のカードドリブンは、ハーマンの「ウィーザピープル(アメリカ独立戦争)」から始まった。以後、彼自身の作品として「フォーザーピープル(南北戦争)」、「エンパイオブザサン(太平洋戦争)」があり、その他にもシモニッチの「ハンニバル」、レイサーの「パスオブグローリー」、ルンケの「ウィルダーネスウォー」などの傑作が相次ぎ、今も新作が出続けている。
その一方でカード駆動のゲームシステムは昔からあったのではないかとの指摘もある。これに対するハーマンの今回の定義では、「カードを用いることで、隠された複数のオプションから戦略や機動を選び取れるゲーム」とするべきと主張している。
この伝で行くと、「アサルトオンホス」や「ガンスリンガー」などは外れることになる。前者では機動する順序をランダマイズしているのであり、後者ではカードを選択するのは秘密裡であるが相手が持っているオプションは毎ターン常に同じであり手札を類推したりすることはなく、その意味ではプロット用紙の代わりでしかない。その一方で、「ペンタンタスター」や、「スターウォーズ:クイーンズギャンビット」、「ウォーオブザリング(FFG)」などは列記としたカードドリブンと言うことになろうか。
いずれにせよハーマンが既成のウォーゲームシステムに対してカードドリブンで持ち込みたかったものは、指揮官の視点では既存のウォーゲームほど自由に戦略は選択し得ず往々にして様々な制約の範囲でしか選択できなかった(自分の手札による制約)ということや、しかしその制約を相手には悟られないように欺瞞しようとしていたこと(手札の温存によるブラッフィング)、そして相手の意図を見抜こうとしていたこと(相手の手札の推測)などであり、その目的に照らしてカードドリブンは必要十分に合目的なシステムだと思う。
カードドリブンに対して不当にプレイヤーの自由を奪っているという非難や、カードドリブンの定義が徒に広くなっていることに対する彼のフラストレーションが感じられる原稿になっている。
個人的な意見を言えば、狭義のカードドリブンは大成功を収めており、それはハーマンがこのホビーで成し得た幾多の成果の中でもベストのものになったと思う。もちろんシステムが業界で重要なものになりすぎたために色々と本人の意図を離れてしまったところはあろうが、それはシステムにとっては幸せなことなのだと思う。