SGC例会:スリックを対戦プレイ

bqsfgame2007-04-30

atog師匠持参の石油ビジネスゲーム。
あの「レールウェーライヴァルズ(ダンプフロス)」のワットのデザインする石油ビジネスゲームと聞いては、プレイしない訳には行かないだろう。
ゲームの大枠の構造は、18xx系と同じである。プレイヤーは投資家の立場であり、会社はそれとは別にオペレーションする。ある会社の筆頭株主が社長として会社の意思決定を行うが、筆頭株主が交代すると会社の所有者は変わる。会社の資金はプレイヤーの資金とは別に管理され、プレイヤーは出資に対するリターンとしては、運営時に支払われる役員報酬株式配当、そしてゲーム終了時に会社の資産を評価して分割する資産評価配分を受け取る。
先ずルールを聞いたときに思うことは、これは全然立ち行かないのではないかということ。ご存知の通り、石油ビジネスは巨額の設備投資を必要とする大型装置産業である。最初の親株券が買われた時点で会社がフローティングする本ゲームでは、最初の製油所を買って第一回の原油調達をするといきなり赤字に転落してしまう。その後の株が買われて資金が調達され有利子負債を返済し、売り上げが立ち始めると事態は安定し始める。会社が安定すると役員報酬が払われるようになり、油槽所の投資が行われ備蓄が増えると大型の取引が達成されるようになり巨額の売上げが出て、それ以上の投資が要らなくなることもあり配当が支払われるようになる。
石油業界の設備が大きいことによる特徴、その物流システムとして油槽所が配送のためにも需要に対するバッファーとしても必要なことの特徴など、石油ビジネスの真髄を捉えた素晴らしいデザインだと言える。このゲームの前には、「マックマルチ」も「ギガンテン」もお呼びでないと言って良いだろう。
ただ、このゲームには一つだけ深刻な欠点がある。
それは、ゲームのフレームワーク上、勝敗を競う上で一番重要な意思決定である株の購入がスゴロクで決まってしまい、まったくランダムなのである。この一つの点を取ってダメゲーと評価する人が少なからずいることだろう。
簡単な解決策としては、スゴロクを止めてしまって各プレイヤーターンに1枚ずつ自由に株を買えるようにしてしまっても良いのではないかという気がする。そうしたときにどうなるのかは、一度やってみなくてはなんとも言えない。
あとは最後に会社の資産評価をして配分してくれるのだが、これは少々甘い。設備は減価償却しないどころか購入価格より高く評価されるし、在庫もしかり。しかも中間輸送コストを掛けて油槽所に移動したものは、その移動コスト分の資産価値上昇を見てくれると言う信じられないほど甘い資産評価なのだ。
これに加えて株が後から購入するほど安くなると言う時価低減要素があることと相俟って、結構、儲かってしまう。
もっともこれには理由があって、実は株式枚数がほとんど売れていない会社は、分母が小さいので凄く資産評価で儲かる。これを薄めるためには、株が多く売れている会社に多少の優遇措置をしてやる必要がある。また、初期からの株主は、過去の役員報酬や配当で儲かっているはずなので、それを補完するために後続の株主に対して割り引いているのかも知れない。
個人的には後者は無用の配慮だと思う。最初から会社のまだ立ち行かないかも知れない時期のリスクを抱えた人に多くの利益が配分されるのは必要であり必然だと思う。また、前者については資産評価が甘すぎることが問題だと思う。もっと厳しく評価してやれば良いのではないか。
と、リアリティの面からコメントしてみたが、実際は難しいかも知れない。今回はわたしは気持ちよく勝たせてもらったが、それでも手持ち資産は1.5倍くらいにしかならなかった。リアリティのあるゲームにすると、限りなくほとんど儲からないゲームになってしまい、爽快感がなくなってしまうことだろう。シド・サクソンの「ブラックウェンズデー」がリスクばかり高くほとんど元本が増えず辛辣だったが、それと同じことになってしまうかも知れない。
しかし、その一方で、それが石油ビジネスの真実なのだから、そう描写して欲しかった気がする。