食糧自給自足から工業消費財が潤沢に手に入る社会へ

このゲームの最終的な勝利判定は、社会水準×支配エリア数で得られる得点による。ここから失業者や飢餓人口がマイナスされる。
この社会水準というのが曲者で、ゲームの原点は、人口1単位が食料1単位を生産して自家消費する食料のみが充足される社会である。これが社会水準0である。これに対して、機械化による省力化を果たして鉱業・工業へと人口を配置できるようになり、多少の工業製品が流通するようになると社会水準1となる。そして、全ての労働者に基本的な工業製品が行き渡ると社会水準2に、そして潤沢な工業製品が全ての労働者に行き渡ると社会水準3が実現する。
エリアを2倍にするのは大変なことだし、3倍にはおよそなりそうもない。となると、一定規模のエリアがあったなら、領土拡張で他勢力とギスギスするよりは社会水準を整備した方が効率が良いことになる。
デザイナーズノートにも書いてあるが、これがデザイナーからプレイヤーへのメッセージらしい。つまり、プレイヤー間の関係は領土を争って戦う関係ではなく、高い社会水準を実現するために協調し交易するような関係であるべし‥ということだ。
実際のプレイでそのように動くかどうかは、プレイするプレイヤーたちの意識や勝利するための戦略によるのでなんとも言えない。だが、デザイナーの意図はそこにあるということだ。
かくて軍事ユニットが一応用意されているSPIのヘクスゲームでありながら、本作は紙幣も併せ持ち、プレイのほとんどは自領土の状況を示すチャート上でマーカーを上下する作業に終始するものとなっている。
あまりにも強烈な個性を持つこのゲームだが、ゲームシステムを議論する向きには、こんなゲームがあるのだということをお知らせしておきたい。
幸いにして本作はアメリカではそれほど人気が高い訳でもなく、プレイするために中古品を買うのであれば、それなりの金額を出せば手に入るようだ。ただし、なにせ供給が細いアイテムなので、本稿を読んで欲しがる人が増えて急騰しないとも限らず、そこまでは当方関知いたしかねるので悪しからず。
[つづく]