☆最後の惑星船の謎を読む

bqsfgame2008-07-04

1964年に出版され、日本では久保書店から1975年に訳出された。
先日の「フェッセンデンの宇宙」で編訳者の中村氏が溺愛していると書いた本。
結論から先に行こう。
本書の唯一の難点は邦題にあると思う。原題は「創造の谷」であり、秘境SFらしいタイトルだ。これで良かったのではないかと思う。邦題は本書がエスエフであることを明示するための苦肉の策だと思うが、クライマックスのネタバレ気味でもあり感心しない。
しかし、その邦題の難を除けば、あとは何一つ不満のない傑作だと思う。日米それぞれの出版年代を考えると、どちらでも出版された当時には傑作と呼んで良かったはずだと思う。もちろん40年以上を経た今の時代の水準で見ると、クラシカルに感じる部分があるのは止むを得ない。
アジアの秘境、傭兵崩れの主人公たちという設定は、シモンズの「夜更けのエントロピー」所収の短編群と似たタッチで始まる。しかし、本題への展開が速く、そこからさらに意外な展開へと足早に進んで行き、一気に最後まで読ませてくれる。
後書きにもあるが、現代社会へのアンチテーゼ的なメッセージ性も併せ持っており、単なる冒険小説の域を越えた格調さえ感じさせる。なるほど、これはハミルトンのベストの一つと言って良いだろう。