各作品について

「フェッセンデンの宇宙」
日本では「ドラえもん」にも出てくるほどの人気のネタの一つ。実はオリジナルは初めて読んだのだが、思ったよりしっとりとしていて口当たりが甘い。
「風の子供」
編者の中村氏が偏愛するという冒険物の一作。そうか、こういうものも書くのね。
「向こうはどんなところだい?」
英米では同タイプの作品「プロ」とともにハミルトン短編の最高傑作との評価もあるという一作。宇宙探検から帰ってきたパイロットの憂鬱を描く。タイトルはパイロットが帰郷して周囲の人から繰り返し質問される文句。
「帰ってきた男」
これこそハミルトンが書くとはびっくり。誤って埋葬されてしまった男が、棺桶から脱出して街に帰ってきたが‥。ヒトの居場所というのは一度なくなると取り戻すのは確かに難しいのかも知れない。
「凶運の彗星」
彗星からの地球強奪計画を描いた中篇。出来は悪くないと思うが、本編の中では意外性のない作品かも知れない。
「追放者」
自分の設定した架空世界に入ってしまって帰ってこれないSF作家の話し。モデルはヘンリー・カットナーだと言う。
「翼を持つ男」
ミュータントテーマの中篇。本当に翼を持ち、鳥とともに空を本性の住処とする男の物語。佳作。これはハミルトン的には意外性のある作品。
「太陽の炎」
惑星探査から帰ってきて別人と化し沈黙を守る男の物語。「向こうはどんなところだい?」と対句になっていると言われると確かにそうだが、どちらを読んでもハミルトンが実際の宇宙探査にそれほどロマンを感じていなかったように思われる。
「夢見るものの世界」
連続性のあるファンタジー世界での人生の夢を見る男の物語。ヒロイックファンタジー的なものも書けるのかと再認識。考えてみれば当然なのかも知れないが。
(入院先にて)