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bqsfgame2008-06-23

1997〜8年にSFマガジンに連載されて反響を呼んだ谷甲州の意外な作品。
ハードカバー版の帯の惹句によれば、諧謔と倒錯のバイオサスペンス。
舞台は23世紀、場所は大阪ミナミを皮切りに、上海、霞ヶ関、月面クラヴィウス研究都市とテンポ良く移動していく。
近未来の医療技術の進歩を踏まえた倒錯的なセックスシーンとバイオレンスが交錯し、かなりどぎつい読み物だと思う。谷甲州というネームからは想像しがたい作品だった。
ただつまらないかと言うとそんなことはなく、900ページの対策を非常にテンポ良く読ませてしまうのはさすがだと思う。
作者は、未来史、宇宙の構造をクリアしたので、人類の進化テーマを手掛けたくて取り組んだという。解説者はなんとか本書の良さをヨイショしようとしている。
しかしながら、作者と解説者の努力にも関わらず、あまり趣味の良い読み物でないのは事実だと思う。作品としては、「ドクター・アダー」に一番近いだろうか。
少なくとも個人的には谷さんにこの路線を続けないで欲しいと思ってしまう。
(入院先にて)