○ロボットオペラを読む

bqsfgame2012-03-31

図書館で借りてビックリ、漬物石のような大冊。
古今東西のロボットSFを集め、それに年代別の解説を付け、識者たちのロボットテーマのトピックに関するエッセイを集め。なんと贅沢な作りのアンソロジーか。
海野十三の「ロボット殺人事件」は、いかにもと言うアンティークな一編。当時の作品らしい一種のスパイ活劇になっていて、「浮かぶ飛行島」を読んだ時のことを思い出したりもした。
ウィンダムの「孤独な機械」は、文明化された火星からやってきた宇宙船が事故を起こし取り残されたロボットが野蛮な地球で味わう苦悩。ウィンダムらしい優しさと辛辣さのある一編。
アシモフの「うそつき」は、相手の気持ちを慮ってうそをつくロボットの話し。ロボット三原則を高尚なレベルで判断して運用するロボットと言うアシモフならではのネタ。
CLムーアの「美女ありき」は、いかにもムーアらしい情緒がねっとりとした一編。大事故に遭って半ばロボット化した大女優の復帰にまつわる人間であることからなにか欠落した存在を念入りに描く。
ディックの「にせもの」は、ディックらしい信じていた現実が音を立てて崩壊する一編。
オールディスの「世界も涙」は、感情が枯渇してしまった未来の人類の異形の世界を鋭く切出した小品。「グレイベアード」もそうだが、他の人が書いたら作品の体をなさないであろう作品だ。
星新一の「ボッコちゃん」は、解説不要の代表作。なるほど確かにロボットテーマだ、言われてみれば。
キット・リードは、サンリオから一冊だけ長編が訳された中堅女流作家。この「オートマチックの虎」はタイトルの通りの自動人形の虎が出てくるのだが、それが主人公に与える自信の威力が凄い。それがどんどんエスカレートしていき、果たしてその顛末は? なかなか読ませる作品で、これを読むとサンリオの一冊を探してみようかと思ったりもする。
ラファティと言う人は当たり外れのある人だと思うが、「素顔のユリーマ」は今一つかも知れない。
田辺聖子の「愛のロボット」は、ウーマンリブを逆手に取った架空世界の奇妙なロボットの使われ方を描いた作品。かなりちゃんとSFしているのが意外と言えば意外。
堀晃の「最後の接触」は、宇宙船の生体部品になって宇宙へと旅立つ男の物語。
菅浩江の「KAIGOの夜」は、介護されるロボットと言う奇抜なアイデアから始まり、その悲しい大きな背景事情の謎が解き明かされる。
藤崎慎吾の「コスモノートリス」は、人類が様々な形態に分化した宇宙生物になった遠未来の物語。ベアの「鏖戦」を思い出した。