小松左京、短編振り返り特集、第3弾。
ハルキ文庫の結晶星団です。
収録作品は、
結晶星団
星殺し
飢えた宇宙
宇宙に嫁ぐ
サテライトオペレーション
神への長い道
歩み去る
劇場
雨と、風と、夕映えの彼方へ
氷の下の暗い顔
となります。宇宙編アンソロジーです。
さすがの読み応えですが、正直言って質・量ともに重すぎるかも(笑)。
中村セレクションには、
結晶星団
雨と、風と、夕映えの彼方へ
氷の下の暗い顔
の3作品が入っていますので、まずそこから。
「結晶星団」は、
14個の恒星が6角柱の結晶状に配列されている大宇宙の奇跡。その中心部に謎の暗黒質量が‥というお話しです。ネタバレしてしまいますが、実は宇宙の進化の中で可能性を実現できなかったものたちが封印されているというのです。
本書の終盤4作品は、そっくりカドカワの短編集「氷の下の暗い顔」を収録しています。この短編集は「ゴルディアスの結び目」の続編的な位置付けの本格SF短編集なのだそうです。知りませんでした。
「雨と、風と、夕映えの彼方へ」は、
遭難した宇宙船乗りが、一緒に遭難した男といると男の頭上の何もない空間から雨が降りだし、ついには滝のように流れ落ちて、気付くと男は消えていたという第一場。
第二場では、今度は救助に来たかと思ったら自分も遭難したという男が現れて、その男のいる所では常に風が吹いているという。
お判りの通り、第三場では、別の宇宙人が現れて永遠の夕映えを見ることに。
ネタバレしてしまうと、ここは物質が縮潰するブラックホールと対になる想念が凝縮するイマジナリーホールだという。
「氷の下の暗い顔」は、
銀河系から遙かに離れた氷惑星の氷の下に8kmに及ぶ巨大な顔があるというお話し。ビーバーに似た原住民が暮らす、この惑星は、お伽噺が現実になるかのような奇妙な惑星で、動物と植物の境界がなく、また互いに彼らは想念を伝え合えるという。そして、惑星にたった一本だけ残っている「木」に話しを聞きに行くと‥。
中村セレクションはさすがだなという気がしました。
「神への長い道」も著名な作品ですが、中村セレクションには入っていません。確かに厭世観ただよう作品で、読後感が良くないので入れなくて正解かと。
「歩み去る」も、「氷の下の暗い顔」からの一篇ですが、これは面白かったです。地球の歩き方みたいに何かを探し求めて旅をして消えてしまう若者たちの話しです。これも文明の終結点の話しではあるのですが、非常に明るくてあっけらかんとしています。
「飢えた宇宙」は、一種の密室ミステリー。宇宙船は密室の一種ですが、そこで食糧庫が空であることを見つけたクルーたちは、一人また一人と姿を消して‥。