☆火星鉄道一九(前半)を読む

ついに外惑星動乱、開戦です。

精密な計算に裏打ちされた.... - 火星鉄道一九 (ハヤカワ文庫JA―航空宇宙軍史 272)のレビュー | ジグソー | レビューメディア

○火星鉄道一九

外惑星側の奇襲攻撃の一つ。火星のオリュンポス山に穿たれた射出軌道への攻撃です。八木澤少尉は、なぜこんな所が狙われるのだろうと疑問を持ちます。

火星開発華やかなりしころにはもてはやされた軌道も今ではさびれています。しかし、外惑星側は航空宇宙軍の重水素燃料を締めあげる作戦に出たため、火星の氷を軌道に射出できる軌道は戦略目標となりました。

ザナック中尉は敵の狙いを見抜くと、軌道を後ろ向きに射出して入射してくる爆雷を叩き落とす決死作戦を敢行します。

☆ドン亀野郎ども

地球陣営への重水素供給ラインの中でももっとも供給量の大きいカリストエクスプレスを金星軌道付近で捕獲するタートルと呼ばれる背負子のような推進パックを背負って仕事をする二人の三曹の話しです。

カリストエクスプレスは距離が長いために拡散が大きく、供給量が多いために捕獲してから別の方向へ射出するケースもあり、彼らカメ(高木とチャン)の仕事は意外に負荷が高く作業量も多いのです。

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それにしても宇宙の話しであり、重要な兵站の話しでもあるのですが、地味です。

○水星遊撃隊

水星は開戦時に木星から見て地球の裏側だったので後方地域と見られていました。

しかし、奇襲攻撃を掛けた外惑星の仮装巡洋艦の1隻(バシリスク)が脱出コースに太陽フライバイを選んだため、期せずして臨戦態勢となります。

○アステロイドエクスプレス

地球陣営も重水素供給に無策だった訳ではありません。アステロイドベルト付近まで制宙圏を拡大して、そこにあるコンテナを捕獲しに掛かりました。

そのための前哨艦隊として使い捨てにしても良いような鈍足艦を集めて実施されたのが本作戦です。艦隊内では顔触れを見て、敵主力を誘引するための囮なのではないか自分たちはという疑いも出て意気上がりません。そんな時、センサーの梶一曹は敵影を発見します。

最初の攻撃で艦長のアチット大佐が戦死し、先任のコックス大尉が艦長、艦隊長代理となります。

☆フライングタイタンズ

前半(星の墓標より時系列的に前の分)の最後を飾るのは、濃密な大気を持っており、いわゆる飛行機が活躍できる唯一の戦場タイタンにおける空戦です。

現代空戦は電子戦闘が重要であるというのは周知ですが、本編の電子戦描写は迫真です。「ダウンタウン」や「ナイトファイター」をプレイして電子戦への理解が進んでからの再読で、感慨もひとしおでした。集中の白眉と思います。