☆最終兵器、ネメシスを読む ネタバレ注意

巡洋艦サラマンダー」も最後まで来ました。

「アナンケ迎撃作戦」で外惑星同盟側は、即時停戦(実態は降伏)となりました。

「最終兵器、ネメシス」の舞台は、なんと今まで全く出てこなかったイオです。

イオは、木星ガリレオ衛星で一番内側を回っています。

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イオは地球以外で唯一、火山活動のある太陽系天体です。

そのため地表は生活に適さず、結果としてガニメデやカリストとは人口でも経済力でも比較にならない規模です。それが故に発言力も戦力も乏しく、第一次外惑星動乱では影が薄い存在です。

ところが、この短編ではイオの火山活動を利用した最終兵器ネメシスの研究機関であるアルゴスⅢ基地が舞台となります。

ネメシスは、イオの火山活動からエネルギーを取り出すための民間研究を転用して、イオから巨大岩塊を軌道上に射出し、それをもって航空宇宙軍を攻撃しようというものです。言ってみれば、ガミラスの遊星爆弾です。

遊星爆弾が古代進の両親を襲う。(第13話) - 宇宙戦艦ヤマトの心

ただ、そうした経緯からアルゴスⅢの要員構成は非常に特殊です。イオの研究者が戦時採用されたイオ宇宙軍のメンバーが半分。残りはガニメデとカリストが送り込んできたお目付け役士官たちです。

そして終戦に伴って、ガニメデとカリストは、アルゴスⅢの研究データの廃棄を命じます。対してイオの研究員たちは、平和になればイオの復興のために役立つからと廃棄に反対します。

かくてアルゴスⅢというイオ軌道に浮かぶ研究施設、一種の密室の中でイオ研究者対外惑星同盟工作員の戦いが繰り広げられます。

一種のテクノスリラーになっていて、終戦後の話なのに凄く緊張感のある短編となっています。

今回読んで、あまり記憶がなかったのですが、書誌情報を見たらSFマガジン掲載履歴がなく、文庫書下ろしで加筆されたものだそうです。なので、本書で一回しか読んだことがなかったようです。