○見知らぬ者たちの船を読む

ボブ・ショウです。

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「眩暈」、「メデューサの子ら」と、非常に良い感じで来ていました。が、本書は物足りない感じです。

先ずリーダビリティが良くありません。これは多分に翻訳の問題かなと言う気がします。

次にストーリー的にも、あまり面白くありません。

ショウがヴォクトの大ファンであることは知られていることです。本書はヴォクトの代表作の一つ「宇宙船ビーグル号の冒険」のオマージュ作品です。

宇宙地図製作公社が送り出したサラファンド号は、泡と呼ばれる人類の既知宇宙の表面を広げるべく探査をしています。人工知能の船長の下、昔ながらの船乗りのごとく航海ごとに契約する公社メンバー12人を乗せて旅に出ます。

全体は5つのエピソードに分かれています。

第1は、「黒い破壊者」を思わせる孤独に暮らすエイリアン側の視点でサラファンド号と遭遇するエピソード。

第2は、航海中の娯楽として提供されている「夢中装置」の中の仮想ヒロインを巡る諍い。

第3は、自動追尾機能を持つミサイルの大群が遊弋する地域にうっかり踏み込んでしまった隊員の脱出。

第4は、迫害されている時間線を往来できるエイリアンを巡るちょっと泣かせる話。

第5は、ドゥインドル収縮律という別の物理法則空間に囚われて遭難してしまいます。

こうした5つのエピソードによる構成、また個々のエピソードの類似、宇宙船内の人間関係の手厚い描写など、「宇宙船ビーグル号」との類似は多岐に及んでいます。

で、オリジナルと比べて面白く書けているかと言うと疑問。

ショウ自身がヴォクトを好きなのは良いと思います。

ですが、解説の引用にもある通り「ショウの作家としての長所はヴォクトのそれとは全く異なっている」ので、ヴォクトのように書くことは筋が良くないように思います。そういう意味では、翻訳の問題がなかったとしても、本書はそれほど高くは評価できないのかなと思いました。