×ハイドゥナン3−4を読む

bqsfgame2008-10-05

前半を読み終えてから実に2ヶ月余り。
なんとか終わりまで辿り着いたと言うのが率直な感想だ。
本書の評価は非常に難しいと思うのだが、迷ったが総合的には×にしておいた。
最大の理由は、読みにくさだ。
かつてフレミングはベストセラーを書くコツを尋ねられて答えた。「簡単さ、読者にページをめくり続けさせればいいんだ」。
その意味で本書はページをめくり続けさせる力が非常に弱い気がした。
逆に最近読んだ中でめくり続けさせる力が強いなと思ったのは、「ハリーポッター」と「時はつるところ」だろうか。
ハリーポッターが世界的にベストセラーになった最大の理由は、単純にしてフレミングの指摘したコツを見事にクリアしている点ではないだろうか。数年前のイタリア旅行では英語版の5巻が出たばかりで、TGVの車両の中では、多くの人が黙々とハリーを読んでいた。日本でもそうだが、どこの国でも分厚いハリーを、小学校低学年くらいの子供が先を急いでどんどん読み進む姿が多く見られた。ページをめくらせる力の強さ‥こそが、ハリーポッターの魔法だったのだろうと思う。
ハミルトンについては、もう少し重ねて本を読んでからまとめたいと思っていたが、やはりこの人の最大の魅力もページをめくらせる力の強さだろう。多少、軽く感じられ、どうしてもエンターテイメント寄りと見られて、キャンベル主義者からは語るに値しないと冷たい仕打ちを受けているハミルトンだが、結局のところ時代を越えて読まれるものの多くはページをめくらせる力に溢れたもののような気がする。キャンベル編集長本人の作品よりもハミルトンの作品の方が長生きするであろうことを筆者は個人的には疑わない。
さて、本書だが、SFの魅力の一つとして現代テクノロジーの最先端の魅力を捉え、その延長線上に仮想の楼閣を築き上げることがあると思う。その観点で言えばハイドゥナンは大変な力作であり、しかも膨大な量の調査と広範な分野を越えて作品を成立させた未曾有の力業だと言える。その観点で言えば傑作と言っても良いかもしれない。
その一方で、ストーリーが琉球救出を越えた範囲に拡大した辺りから、登場人物の誰に共感して、どのミッションの達成を期待して読めばいいのかが見えなくなってしまう気がする。特にエウロパダイバーの話しや、惑星生命体仮説などは、本当は分離して続編か番外編にでもした方が良かったのではないかという気がするほど、テクノロジーで見ても登場人物で見ても異質な気がした。
場面転換が多く、登場人物が多くなりすぎたのも、読みにくさを増しているような気がする。
そんな訳で大変魅力的な作品でありながら、ボリュームも含めて消化しにくい作品になってしまっているように思う。