☆ガラスの塔を読む

bqsfgame2014-03-07

ロバート・シルヴァーバーグ
彼がニュー・シルヴァーバーグと呼ばれたのは、1967年の「いばら(ハヤカワ「いばらの旅路」)」から1976年の「炉の中のシャデラック(創元「不老不死プロジェクト」)」までの10年に欠ける期間になる。この時期のシルヴァーバーグの作品は読み応えのあるものが並んでいる。
本書は、時期的にその中央くらいに位置する作品になる。
率直に言って宗教色が強く、最低でも創世記、キリスト降誕、バベルの塔の話しが判らない人は手に取ってはいけない。
端的に言えば、本書は「火の鳥:アンドロイド編」である。もっとも手塚治虫のように読みやすくはないし、親切でもない。
本書の設定は、意外にもファーストコンタクトである。宇宙の向こうから飛んできたメッセージに応えるためにタキオンビーム発射塔を建設するのが中心軸である。しかし、そのための労働力の不足を補うために、まずアンドロイドを創造する所から始まる。かくして、本当に創造主を持つ種族、アンドロイドたちが誕生した。
この物語の主人公はアンドロイドたちであり、実際に創造主を持つ彼らの宗教や人権運動などが描かれる。そして、創造主に裏切られる悲しい物語である。
他にも様々な要素が盛り込まれていて300ページの長さの割に重厚な読み応えを持つ作品に仕上がっている。個人的にはシルヴァーバーグの中でもトップクラスの作品だと思う。再読しても、その意見は揺らぐことはなかった。宗教色の強い作品にアレルギーがない人なら、お薦めである。