☆空獏を読む

bqsfgame2009-12-05

北野勇作は、最近の若手SF作家の中で一番信頼できる打率の良い作家だと思う。
今回の作品は、戦争ものという設定を決め、そこで空爆に掛けて空獏というタイトルを決め、そのタイトルから想像を膨らませて奇妙な戦争を描き出したもののようだ。
原因がわからなくなるほど長く戦っている戦争に従軍させられる話しというと、SFではホールドマンの終りなき戦争を思い出す。宇宙の戦士とかエンダーのゲームとかも戦争SFだ。
この空獏の戦争は、原因が判らないばかりか、戦況も判らない。敵も判然としない、そもそも今参加している作戦の目的すらも判然としないのだ。
ところが、不気味な戦争の影というのはそこかしこに感じることができる。戦争と言うのは案外そういうものなのかも知れない‥(^_^;
北野作品で戦争の影を感じるのは、代表作のかめくんもそうだが、今回は特に不気味なダークテイストが強いように思う。なかなか良く書けていると思う。しかし、すっきりとした説明や決着を欲する向きには、まったく向かないだろう。そんなものは此処には存在しない。きっと獏に食べられてしまったに違いない。