☆遥か南へを読む

bqsfgame2011-01-24

傑作「少年時代」以来のマキャモン。5年5ヶ月ぶり。
結論から書こう。
「少年時代」にこそ及ばないけれども、本書もかなりの傑作だと感じた。
読書と言うものの醍醐味を久々に満喫させてもらったと思う。
本書はホラーでもSFでもファンタジーでもない。
主人公はヴェトナム戦争に従軍して枯葉剤を浴び、そのせいで心身ともに病んでしまった男だ。心の病のために妻と離婚し息子とも離れてしまった。今は病気のために働くこともままならず、銀行からの自動車ローンの返済も滞っている。そんな折に銀行の担当者が変わり、自動車を差し押さえられそうになる。
銀行へ自ら交渉に乗り込むが埒が開かず暴れるのだが警備員に取り押さえられそうになり逆に警備員が持っていた拳銃を奪う、そこへ銀行員が背後から狙いを付けているのに気付き反射的に先に射ってしまった。かくて、殺人犯となり逃走を開始する。
なんとも陰鬱な設定だ。
この後、延々と逃避行は続いていくが、それを追うもの、途中で道連れになるものが登場して4人のグループ(?)となって、ひたすら南へ南へと物語は進んでいく。
最後の結末は、読んでいない人にネタバレになりにくいように書いておくとすれば、わたしはレズニックの「サンティアゴ」を連想した。
ちょっとした大作だが、ストーリーが流れ始めると、一気に最後まで連れて行かれてしまった。
小説って、こんなに力強いものだったのかと久々に驚かされた。