浅倉久志さんが亡くなられた。
筆者と同世代のSFファンの多くは、浅倉さんが訳してくれた海外SFの流れに沿ってSFしてきたと言っても過言ではないと思う。
巻末のワークリストは、とても一人の仕事とは思えないほどの膨大な量の翻訳作品が並んでいる。
この号ではその中から選りすぐりの5編が再録されている。
「田園の女王」は、いかにもラファティな語り口の短編。しかし、自動車黄金時代に対する強い皮肉が籠められており、軽そうに見えて一筋縄では行かない。18xxシリーズファンの一人としては、なるほど鉄道が反映し続ける別の歴史の分岐があっても不思議ではなかったのかもと思わされる。
「この嵐の瞬間」は、ゼラズニイらしい神話的な一編。「この死すべき山々」が登山SFだとするなら、本作品は荒天SFと言ったところか。ただひたすらに雨が降り続ける話しだ。それを野暮ったくなく読ませてしまうところがゼラズニイ一流の芸だ。