2012-08-29 ☆ブラックアゲートを読む 上田早百合さんの最新作。 破滅テーマの一種。 離島で昆虫と戦うと言えば、巨匠ウィンダムの遺作「ユートピアの罠」を思い出す。ウィンダムの作品は文明への警鐘を主題としていたが、こちらはむしろ人の絆を信じる者と、人の絆に絶望したものの知恵比べが手に汗を握るサスペンスになっている。 スケールでは華竜の宮に劣るが、完成度は断然こちらが高い。登場人物が減った分だけ、各人物の書き込みに厚みが増し、ストーリーもスケールが小さい分だけ逆に緊迫感が漲ったように思う。 断然、本年度の星雲賞候補だと思う。