スペイン継承戦争を対戦プレイする4

ゲームは5ターン目で投了となりましたが、その前の第4ターンからゲームは賑やかになりました。このターンに増援として登場したベリック公を、フランス軍は史実通りにスペインに派遣しました。これを見て提督さんは、「ジブラルタルおよび参戦したポルトガルからのマドリード進攻が不可能になった」と残念がりました。これは状況認識が甘く、実は荒地が多くスタック制限の厳しいイベリア半島では、ベリック公の増援部隊は最強の存在なのです。フランス軍は、この部隊をポルトガルへと侵攻させ、一気にリスボンへと迫ったのでした。
リスボンは、ブルボンの地中海制海権を阻止する効果があり、これによって毎ターン−2点の出血を同盟は止められます。逆に言えば、リスボンが陥落するとリスボンの−1点に加えて毎ターン−2点が発生するので、VP的には深刻な打撃なのです。
さすがに1ターンでリスボンまで陥落したりませんが、リスボン攻防戦が最大の焦点となったところで第5ターンへと移りました。
それと同時に、本ゲームでは初期には手番は同盟軍先手で、最後の手止まりをフランスが握っています。このことを利用して第4ターンの最後に、地味ながらもヴィラール公の部隊とマクシミリアン2世の部隊が合流しました。
そういう状況下で第5ターンが始まり、イベントカードは「フランス指揮官、宮廷の不興を被る」でした。これにより同盟はフランスの任意の指揮官を1ターンだけ除去できるようになりました。結果論ですが、これが最後の場面に大きく影響しました。同盟はタラール公を選択して除去、これでオランダ戦線でのマールバラ公の優位は決定的になりました。しかし、その後に指揮官の再配置があるので、フランス側は合流したことで余剰になっていたヴィラール公をタラールの後任に据えました。タラール公よりヴィラール公が有能なのでオランダ戦線は逆に強化されました。
第5ターンは、海上移動による同盟のリスボン増強、ベリック公によるリスボン進攻と進みましたが、増強が実を結んで野戦は同盟の勝利。これでフランスの野望は頓挫したかに見えたが、そこで次の策略です。合流したマクシミリアン2世のバイエルン−フランス連合軍で、一気にオーストリアの帝都ウィーンへと進攻します。本作ではオランダのアムステルダムオーストリアのウィーンを奪取しLOCがパリまで引けるとフランスはサドンデス勝利です。史実でもウィーンは序盤から危機にあり、それを払拭するためにマールバラ公はダニューブ川を一気に駆け上ったのです。
これと呼応して、転任したヴィラール公はパリへ向けて前進中のマールバラ公のLOCを切るためにアントワープからリエージュへと前進しました。マールバラ公は熟慮の末に、これを迎撃せず、次の同盟軍の手番に逆にアントワープへと進攻してきました。
この瞬間が大問題で、ヴィラール公はアントワープへと迎撃を試み、これに成功。その結果、マールバラ公がアントワープでヴィラール公を攻撃することになりました。マールバラ公は12ダイス、ヴィラール公は10ダイスを振ると言う一大決戦です。アントワープに要塞線があったので、ヴィラール公の迎撃チェックに続いてマールバラ公の要塞線迂回のチェックです。実はここが同盟軍の最後の引き返せるチャンスで、迂回に失敗すると攻撃を中止できます。しかし、有能なマールバラ公は迂回に成功してしまいました。そうすると自分から仕掛けた攻撃なので戦闘回避の選択肢はなく、12ダイス対10ダイスの決戦です。先に振ったフランス軍は5ヒット、5ヒット以上で勝利すると大勝利で、VPにもなり近隣の後の戦闘にダイス修正も得られます。マールバラ公は、負ける訳には行かず、同点なら防御側の勝ちなので12ダイスで6ヒットを出すしかありません。ダイスが12個もないので6個ずつ振ることとなり、最初の6ダイスでなんと4ヒットも出ました。この段階で、「さすがのマールバラ公の逆転勝利か」と思われましたが、次の6ダイスではゼロヒット! 4対5で防御側のヴィラール公が大勝利を挙げました。大勝利自体が2VPに加え、敗走したマールバラ公の主力部隊はモラル崩壊に。結果として、オランダ戦線はフランス軍の独壇場となった。
実際問題はオランダ戦線が問題なのではなく、やはりウィーンが陥落することがゲームの焦点。陥落すると同盟軍はバーデン辺境伯でマクシミリアン公のパリへのLOCを遮断するしかありませんが、ヴィラール公が自由になるとバーデン辺境伯を粉砕可能なったので、同盟軍は敗勢となったのでした。と言うことで、同盟軍の投了。
個人的な見解を言うと、わたしが同盟軍だったら投げなかったと思います。確かに、非常に困っていますが、ヴィラール公がマールバラ公に勝てるなら、バーデン辺境伯がヴィラール公に勝つことだってないとは言えません。ただ、最初に書いたようにプレイ開始から6時間近く経っており、根気が出ない状況だったのでしょう。
さらに言えば、バーデン辺境伯が敗れたなら、今度はイタリア戦線で傍観していたプリンツ・オイゲンを投入することだって在り得ます。もっともオイゲンを北上させると、それと対峙していたヴァンドーム公が動き出します。フランス側から見ると、ウィーンからパリへの補給路は、フライブルグ経由が本線ですが、実はハプスブルグ領イタリアを守れており、サヴォイの海岸沿いを征服してあったので、状況によってはイタリア周りのLOCも考えられました。同盟軍としては、この両方を遮断しなければなりませんが、オイゲン一人でヴィラール公とヴァンドーム公の二人を相手にして両方遮断するのは非常に難しいのです。そこまで視野を広げると、投了は止むを得ないところでしょう。
しかし、その判断にはドイツ戦線だけでなく、オランダ戦線もイタリア戦線も絡んでいます。また、ウィーン攻略が同盟軍から見て死角に入ったのは、そもそもリスボン決戦が余りに焦眉の急だったことがあり、キッカケはスペイン戦線でした。
そんな訳で、オランダ、ドイツ、イタリア、スペインの全戦線が有機的に結合した非常に優れたスペイン継承戦争のキャンペーンゲームであることを実感しました。