プライスオブフリーダムの人事ルール

南北戦争の戦略級となれば指揮官人事問題は、どうしても避けて通れない。
人事問題にはいくつかのポイントがあり、実際にはそれらが錯綜しているので難しいのだが、単純化して書いてみよう。
1:北軍では指揮官クラスの人材不足が特に前半は極めて深刻だった
2:その結果、とりあえず指揮官に任命した将軍が少なからずいたが、一度任命してしまうと、それを交換することが難しかった
3:南軍では指揮官の人材は揃っていたが、一部の実戦では無能だが政治的地位が高く更迭しにくい将軍たちの扱いに困った
このため、フォーザピープルでは指揮官に序列があり、序列下位の指揮官を軍司令官に抜擢しようとするとペナルティを払う必要があった。しかし、それでも有効スタック数が少なく兵力の貴重性が上回るので、主力の軍の司令官にはペナルティーを払ってでも優秀な人間を抜擢するのが定石と見えた。
ただ、これは指揮官の能力を後知恵で知っているゲーマーのすることであって、史実ではリンカーンは使ってみるまで本当にその指揮官が無能なのか有能なのかわからないと言うことに悩まされたであろうことは想像に難くない。
プライスオブフリーダムでは、序列はないのだが、軍司令官クラスに制限ルールがいくつかある。軍司令官クラスの人材は、軍司令官の下の軍団司令官にできないし、そういう軍団司令官がいると他の人間を上位の軍司令官に付けられない。西部ではハレックが増援でやってくるのがそれで、このためハレック以前に西部で軍を編成することはできるのだが、ハレックが登場すると違反状態になるので、その前に一旦、軍を解散する必要がある。この人事異動には貴重な大統領カードを使うので、できるなら避けたい。結果として、西部軍はハレックが登場した次のターンに彼が昇進して編成するのが常道のようである。
さらに面倒なことが規定されているのがグラントである。上述のように初代西部軍司令官はハレックが既定路線。これに対して、グラントを後任にするにはグラントが実戦で2勝しなければならない。これが難しい。つまり、軍団司令官の権限で2勝しろと言うのだが、軍団司令官は2個軍団(ユニット)しか指揮できず、6個軍団を指揮できる軍司令官とは戦闘での破壊力が格段に落ちる。それで、2勝しろと言うのはなかなか辛いように思える。
ともかく、この条件を満たしてハレックを解任して西部軍司令官にしたとしよう。
その先に、東部軍司令官への栄転があるのだが、そこでは新たにマクレランを含む少なくとも3人の東部軍司令官を解任した後でなければならないと言う制限がある。史実では、マクドウェル、マクレラン、ポープ、バーンサイド、フッカーと5人を切って、事実上ミードを降格させて実現しているので、半分で良いとも言えるが、それにしても1ターンが半年で全8ターンしかないゲームでは随分と厳しい手順を要求するものだ。
結果として、北軍プレイヤーは人事に関して非常に緻密な手順を踏んでプレイする必要がある。
もちろん東部軍司令官をグラントにしなくても勝つ手立てもない訳ではないだろうから、絶対に手順が必要と言うことではない。ただ、マクレランだと移動修整−1が深刻で、本格的に南部へ攻勢を掛けるには都合が悪い。本ゲームでは移動力が3しかなく、これに攻撃参加時は−1と言う修正がある。マクレラン修正が加わると事実上移動力は1に限定されてしまい、これでは南軍に侮られてしまう。
しからば、西部軍に活躍してもらえば良いではないかと思うと、デザイナーはそれぞれの軍はそれぞれの領域を越えて攻撃することを原則として禁止している。したがって、なんとかして移動修正がせめて0の将軍を東部軍司令官に持ってこないと、北軍は勝利するのが難しい。もちろん西部軍司令官についても同様のことが言える。両軍の司令官に、相応の能力を持つ指揮官を配置するには、手順良く指揮官の配置、更迭、昇進を実施する必要がある。これ自体が簡単なパズルくらいの構造になっている。このこと自体は、非常に妥当なシミュレーションだと思うが、初めて南北戦争ゲームをやる人には何のことやら理解しにくい部分かも知れない。