プライスオブフリーダムで両軍の保有軍数が2個に限定されているので、気になって調べてみた。
軍と言うのは戦況に応じて編成されたり分割されたり解散されたりする流動的な組織なので、定数が決まっている訳ではない。存在した全ての軍のわかりやすいリストは日本語では見つからないようなので、著名な軍だけ自分のために整理してみた。
ポトマック軍
言わずと知れた東部戦線の主力軍。マクドウェルが最初の指揮官で第一次ブルランで敗北する。マクレランに交代してから半島戦役で多くの戦いを演じ、最後はアンティータムで苦い勝利を得て奴隷解放宣言の機会を作り出した。バーンサイドに交代してフレデリクス、フッカーに交代してチャンセラーズビルと損害を重ね苦戦した。ゲティスバーグでは、ミードの指揮の下に勝利。実は終戦までミードが指揮している。グラントの立場は北軍東部方面総司令官であり、ポトマック軍を直接指揮したが、ポトマック軍司令官はミードのままだった。ここは間違えやすい所。オーバーランド戦役を経てアポマトックス戦役まで最初から最後までボビー・リーと戦い続けた軍である。
テネシー軍
西部戦線では初期には東部戦線のような主力部隊による激突がなかったことから、軍編成は明確でないようで資料を見ても良くわからない。いずれにせよグラントが指揮してシャイローに勝った編成がテネシー軍の出発点と言って良さそうだ。コリント、ヴィックスバーグに勝利してグラントは北軍東部方面総司令官に昇進して東部へ移動する。後任はもちろんシャーマン将軍で、チャタヌーガ戦に勝利する。グラントの東部総司令官昇進に次いでシャーマンも西部方面総司令官に昇進する。このため、アトランタ戦役では、テネシー軍の司令官はマクファーソンだった。これも間違えやすい所。マクファーソンはアトランタ戦で戦死したので、その後の海への進撃の指揮はハワード将軍が執っているのだが、ハワードって誰?(失笑)
カンバーランド軍
ローズクランスが率いた軍で、ストーンズリバーから、タラホーマ、チカモーガと転戦している。その後はトマスに交代し、チャタヌーガ、アトランタ、フランクリン、最後はナッシュビルと転戦する。CWBでは良く見掛ける軍であり、南北戦争でも屈指の戦いであるチカモーガを始め重要な戦いをいくつも戦っている。ポジション的には東でも西でもなく中央と言うべきだろうか。
東西2個しか軍が編成できないゲームだと、基本はポトマック軍とテネシー軍のイメージだと思うので、カンバーランド軍に相当する軍が登場しないことになる。
個人的にはこれは大きな不満で、ローズクランス将軍の言を借りるならば、
「(陸軍長官殿『スタントン』は、ゲティスバーグとヴィックスバーグの勝利ばかりに注目するあまり)我がカンバーランド軍が中部から反逆者をたたき出すのに成功したことを認識されていないのではございませんか?」と言う所だろうか。
タラホーマの勝利の意義が、東西の二つの戦いと比較してそこまで大きいかどうかは議論の余地があろう。タラホーマの意義は、むしろ直接戦闘ではなく機動によって目的を達することができた稀有な事例としてのそれだと思うからだ。いずれにせよ、その後のチカモーガからナッシュビルまでのカンバーランド軍の戦果は南北戦争で北軍が主導権を取ってからの重要な進撃路の一つなので、これが表現されない南北戦争戦略級ゲームはいかがなものかと言う問題提起である。
以前に書いたかもしれないが、筆者は意外とローズクランスが好きなので、多分に偏向している可能性はある。
ミシシッピ軍
それほど重要ではないが西部戦線時代のポープがミシシッピ流域を担当した軍。アイランド#10の戦いで勝利、これによりポープはヴァージニア軍司令官に抜擢された。後任はローズクランスで、コリントの戦いに参加している。
ヴァージニア軍
マクレランの消極性に業を煮やしたリンカーンがポープ将軍に作らせた軍。第二次ブルランのためだけに存在したような軍である。
ジェームス軍
バトラー将軍が率いた64年から活動した軍である。コールドハーバー以降の戦いに他の軍と共に参加している。バトラー将軍は北軍の最初の志願将官の一人で、はっきり言って無能だと思うが、それでも解任するような大きな失敗がないとそれなりに処遇しなければならなかったようで、そのために作られた軍かも知れない。どこの組織でも、こうした処遇のためのポスト作りと言うのがあると言う実例か。
最近、フジ三太郎が復刻されているようだが、その一篇に万年ヒラ社員の三太郎の昇進について課長が話題にするエピソードがあって、課長が提案したのが「係長(一応)代理(仮)補佐」だったが、ジェームス軍司令官も似たようなものか。単独で実施した著名な会戦がないのは、してみれば当り前。
ミードの件もそうだが、グラントの意外な人事能力を見る思いがする。
他にもシェナンドー軍、サウスウェスト軍、ガルフ軍、西ヴァージニア軍、西ミシシッピ軍など多くの軍が編成されている。それほど戦況的に重要でない軍も多いので、南北戦争全体をプレイアブルにまとめると言う趣旨であれば、無視して差支えないものも多いと言うのは強く同意するところだ。
ただ、印象としては東部、西部に加えて中央にもう一つ欲しい気はする。フォーザピープルのような4つと言うのは、これに加えてもう1つ編成できないと、半島戦役やヴァレー戦役を適切に表現できないと言う意図なのだろう。フォーザピープルのスケールであれば、これは非常に妥当な判断だと思う。