×海の鎖を読む

bqsfgame2013-07-06

スキャナーダークリーで中村融氏が褒めていたのでオークションでSF宝石を探したら、安く売っていたので入手した。
SF宝石は短命だったが印象的なSF雑誌だった。翻訳SF中心、それもNW中心の当時の先端を行っていた。また、有名なSF新刊チェックリストは、カバーする範囲も広く怪獣図鑑的な楽しさのあるブックレビューコーナーだった。これがSFアドベンチャーに引き継がれたのは、むしろ当然だったように思う。
で、本編だが、なんと200枚と長編の半分に及ぶ長さのノヴェラである。
ただ、中村融伊藤典夫の両氏がアンソロジータイトルに推すと言うので、さぞや凄い作品なのだろうと期待過剰になってしまった。
実物を読んだ感想は、ふーん、こんな程度なの?と言う印象。一種のファーストコンタクト物で、アイデア的には地球は別の地球と二重化された存在で、本当の地球の支配者は別の地球の方の知的生物だと言う。で、宇宙人はそちらとコンタクトすると同時に、物質を浪費する地球人は一種の寄生虫と判断して駆除しに掛かる‥と言うもの。これを、別の地球を認識でき、宇宙人とも意思の疎通をできる少年の視点で描く。この少年がその能力故に親に疎まれ先生に問題児扱いされる孤独な境遇と言う話しである。
なるほどメフィラス星人とか海底人ノンマルトとかを連想させる話しで、いわゆるイイ話し的な要素は備えている。
ただ、なにせ200枚を支えるだけのコンテンツが足りない。誌面の都合に合わせて無理に書きのばしたような中身の薄さが印象悪く、個人的にはとても推せない。
これで、ドゾワの「異星の人」を探したりすることもなくなり、ちょっとホッとしている。ただ、名アンソロジストとして信頼を置いていた中村融氏の推薦作にもハズレはあるのかと残念でもある。
それはさておき、新刊チェックリストは面白い。当時の本ばかりだから、読んだ本も多く、そうでない本は入手難だったりするが、いくつか読んでみたいと思う本も出てきた。