☆会津落城を読む

bqsfgame2013-08-12

八重の桜が数週に渡って会津戦争の攻防を描いているが、いよいよ会津若松城の開城まで来た。
と言うことで、実際の所はどうだったのか知りたくて、会津落城を読んでみた。ただ、この本は基本的には小説であって、史書ではないそうだ。また、ネットを検索すると作者に関して、視点の中立性に関しては批判があるようだ。
だが、読んでみた感想としては、意外なほど会津側に厳しく書かれており、ネットの批判は少なくとも本書に関しては当て嵌まらないようように思った。
本書の視点では、会津落城に当って非戦闘員の死者が拡大したのは会津側の準備不足の責任が大きいと言う整理になっている。特にリーダーシップを発揮することをしない主君、容保、重要な緒戦の白河を任されながら惨敗した軍事素人の西郷頼母、戦術的には勇猛だったが戦略的な視点に欠けていた佐川官兵衛、情報戦や籠城の段取りで無策を露呈した田中土佐神保内蔵助などについて非常に厳しく書いてある。合格点が出ているのは、山川大蔵梶原平馬くらいのものだろうか。
また、大河の主人公である山本八重は数行しか登場しない。
そもそも論として、数百年も続いた江戸幕府が呆気なく瓦解するとは想定しておらず、鳥羽伏見からあれよあれよと言う間に会津が総攻撃を受けるとは誰も思っていなかったのだろう。このため、あらゆる点で準備不足が目立つのは無理もないのだろう。しかし、江戸を無血開城した勝海舟や、長岡藩で可能な限り洋式軍備を整えた河合継之助のような人物がいなかったのは、それはやはり会津の能力不足と言われても止むを得ない部分もあるだろう。
特にテレビでは綾野が熱演してしまったために目立たないが、容保のリーダーシップの不足はテレビでも指摘できる。鳥羽伏見で部下が前線で戦っている時に、慶喜と共に船で江戸へ逃げ帰ったり、それを神保修理の責任にして切腹を申し付けたりするのは誰が見ても共感し得ないだろう。どうしてこんな殿様のためにみんな命を賭けるのか説得力がないこと夥しい。