KSロビンスンの火星三部作の第一部です。
奥付を見て驚きました、1998年の出版なのですね。20年前ですか。
最初に読んだ時には、登場人物が多すぎて人間関係を掌握しきれずに苦戦した記憶があります。
今回再読して見ると、だいぶん整理した形で頭に入ってきました。それでも、巻頭にある「おもな登場人物」が不足していて、「これ誰だっけ?」と言うのが少なくありません。
まぁ、巨大プロジェクトですから、人数が大勢出てくるのは必然。むしろ、そこを妥協せずに書ききっていることが本作の最大の売りだと思います。
あと、判りにくさに拍車を掛けているのが、一部ごとに視点人物が移動することです。これも、巨大プロジェクトの様々な部分を描き出すうえでは必要なことでしょう。
第2部の視点人物は、ロシアチームのリーダーであるマヤ。有能、魅力的、そして情緒的に不安定な女性です。彼女が、アメリカーチームのリーダーであるフランクと、最初の火星パイロットであるジョンの両方と関係を持つ所から話しは俄かに痴話模様に。
第3部の視点人物は、ナディアです。現場トラブルに強いエンジニアで、色気はありませんが能力の高さから頼りになる人物として引っ張りだこです。マヤの友人で、彼女から痴話喧嘩の相談を持ち掛けられ閉口しています。
ナディアに視点が移ったことで、マヤから遠かったアルカディイの存在がクローズアップされます。また、極冠への陸上探検、気球による風車設置旅行などで、火星の大きさを感じさせるエピソードが登場します。
第4部の視点人物は、100人のチームの精神科医であるミシェルです。彼の視点からの100人のチームのタイプ分類が語られたりします。どちらかと言えば幕間でしょう。
第5部になって、件の最初の火星パイロットとして最も有名人であるジョンに視点が移ります。時代も大きく進んで、最初の100人以外がどんどん火星にやって来て新しい街が発展し始めます。
そんな中でジョンはマヤと(何度目かの)再会を果たし、2人で延命手術を受けて結婚することにします。ここで上巻は幕を閉じます。
改めて読んでみて、「テラフォーミングマーズ」の多くのガジェットが本書とかぶっていることに気付きました。火星のテラフォーミングと言う題材が同じですから必然でもありますが、ゲームデザイン陣が本書から引いているような気もします。
ちょっと事情によりインターヴァルを置いてから下巻に進む予定です。