今年のノーベル文学賞受賞者、スベトラーナ・アレクシエーヴィッチの代表作の一つです。地元の図書館で借りてきました。受賞早々に予約したので、割と早く回ってきました。
チェルノブイリ被害の現場の声を集めて編集したドキュメンタリーであって、小説ではありません。
非常に重厚かつ辛辣な著作です。しかし、リーダビリティは高く、読み応えのある読書体験を提供してくれます。ソビエトと言う社会の構造的問題を結果として描いているのですが、こうした本が出版され翻訳もされるようになったのでゴルバチョフ時代以降は、やはり開放改革が進んだと言うことでしょう。
恐ろしいことは、こうした著作が存在し、日本語にも訳されていたにも関わらず、日本でも福島原発事故が起こったと言うことです。
人々は、スリーマイルからも、チェルノブイリからも、何も学習できなかったと言われても止むを得ません。チェルノブイリは、ソビエトの行政、研究体制だから起きたので日本の原発はずっと安全だと言う議論が当時あったのを思い出します。それは、技術的に一面の真理なのかも知れませんが、それでも十分に安全ではなかったと言うことです。
そして、今、原発再稼働が進行していますが、それは本当に安全と言い切れる状態で再稼働したのかどうか、国民に判る形で検証されたとは言えないと思います。
筆者は技術者ですので、技術の可能性を悪戯に閉ざすことには賛成しません。しかし、原発については、残念ながら本当に安全に運用していける水準にはまだ達していないのではないかという不安は感じます。特に、最近の安倍政権は強引な執行方法が目立つので、不安感は非常に強いです。
なかなか凄い作品だったので、スベトラーナの他の作品も探してみようと思っています。でも、現時点では非常に入手難だし、図書館にもないのです。