☆原発と日本はこうなるを読む

いま話題の渦中の人、河野太郎の本です。

2011年、福島原発事故の後に発売された本です。

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今回の総裁選で脱原発に関して節を曲げたとか、曲げていないとか話題になっているので、そもそもどういう主張だったのか確認しようと図書館から借りてきました。

結論から言えば、河野太郎はもともと脱原発だったとは言えません。本人の言を借りると、脱「核燃料サイクル」だったのだそうです。

さて、「核燃料サイクル」と言っても、若い人には説明が必要な構想になってしまいました。

軽水炉で発電に使用した核燃料廃棄物から未反応ウラニウムと生成プルトニウムを回収して、専用の原発高速増殖炉)で再利用して多くのエネルギーを取り出そうとする構想です。

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ここで、「構想」と書いたのは、高速増殖炉技術は1980年代に先進諸国で大いに検討されたものの、ほとんどの国で検討中止になっているからです。日本では「もんじゅ」という研究炉を建設しましたが、事故などで廃炉の方針が決まった状態になっています。

と言うことですので、河野氏自身が主張するように全面的な原発反対派であった訳ではないという主張には一理あります。

その一方で、新規原発建設中止と、40年廃炉ルールを徹底して、2050年には原発ゼロを目指すという主張はしており、「河野は脱原発だ」と言う人はこの部分を捉えて論じているのだということがわかりました。

さて、そうした嘘つき問題を離れて本書を読んでみると、非常に良く調べてあり勉強になる本だと評価できます。

やはり、国会議員という肩書だといろいろな官庁や関係団体からちゃんとした資料を出してもらえるのでしょうか。

特に日本で起こった主な原発事故の数が17件という情報には驚きます。これに関連して原子力村の隠蔽体質に関する指摘は非常に鋭いものがあります。

また、原子力村と著者が総称する組織内部での利権構造に関する詳細な説明にも絶句させられます。電力会社と言うのは、こんなにダメなのかと痛感しました。

しかし、河野氏はこれは原子力村だけではなく、他の利権村にも共通する問題だと指摘し読者をさらに戦慄させます。

自民党総裁選に興味がなくとも、原発の真実の一端を知りたい方は是非とも読んでみるべきと思います。内容の濃さから考えれば新刊で買って損はないと思います。