ルールの冗長度

以前に少しだけ書きました。

筆者はルールブックを読む時には下線を引いていますが、下線部だけを読めばルールとして機能するように引いています。

具体的な例を出しましょう。

まずルールそのまま

「王朝ボックス(10.4)に、イリリア朝がある場合、カエサルは凱旋勝利を挙げる毎に追加で1回、任意の統制下のユニットを用いて任意の戦役と交戦することができる」

全部で77文字あります。

下線を引いた部分だけだと

「イリリア朝がある場合、カエサルは凱旋勝利を挙げる毎に追加で1回、任意の統制下のユニットで任意の戦役と交戦できる」

54文字に圧縮されました。したがって冗長度=(77-54)/77=30%

極めて頻出する例として、

「●●することができる」があります。ルールの機能としては「●●できる」で用は足りています。つまり、「することが」の5文字が加わることで、ルールとしては何の機能も追加されません。

もちろん小説の訳文であれば、動名詞不定詞を訳す時に意図的に使い分けているのであれば原文のニュアンスを反映する意味がありますから、このように訳すことが常に意味がない訳ではありません。

先の例に戻ります。

「王朝ボックス(10.4)に、

の部分には意味がありません。王朝チットが出たら王朝ボックスに置くことは別の項目で定義されており前掲自明だからです。なので、「イリリア朝がある場合、」とだけ書けば、それが置かれている場所は必ず王朝ボックスなのです。なので、この部分は冗長であることになります。

一時期流行した「ロジカルシンキング」と同じような話しなのですが、こうしたことを意識するだけでルールブックの記述はずっとすっきりします。入力の手間も印刷インクも削減されて良いことばかりです。

長年、こうしたことを意識して色々なルールブックに線引きをしてきましたが、時折、ほとんど圧縮が効かないルールブックに出会います。GDWのSFゲーム群はほとんどがそうです。「ダブルスター」、「ブラッドツリー解放戦争」など。

恐るべきはこれらのルールブックはルール全文に下線を引いてもルールとして十分に機能しません。冗長どころか、説明が大幅に不足しているのです。

不足しているよりは、冗長な方が罪が軽いとは言えるでしょう。だからと言って意図的に冗長に書くことはないですが。

もう一つ例を

3D6の戦役チェックがトリプル、または白の2個のダイスがダブル、かつイベントボックスで弾圧イベントが重複している場合、大惨事が発生する」

下線部としては

戦役チェックが白の2個のダイスがダブル、かつイベントボックスで弾圧イベントが重複している場合、大惨事が発生する

となります。白2個、赤1個の3個を振るのですが、トリプルの場合は必然的に白は同じ目(ダブル)なので、白のダブルだけを規定すればトリプルは含まれるので、この部分の記述は冗長となります。

これは記述的な冗長度ではなく、論理的に過剰定義なケースです。

このパターンになると、ゲームルールとして理解して読む必要があるので、少し難しくなります。