ラレギアマリーナのルールを読む

来月の千葉会の候補ゲームとして浮上。
ともかくも読んでみました。
一読した印象として、ニューバーグと言う人は非常に頭の良い人だと言う印象を受けました。たかさわさんには以前にお話ししたようですが(筆者失念につきたかさわさん談による[笑])、筆者はルールを読む時はルールとして最低限必要な記述部分にアンダーラインします。で、再読する時はアンダーライン部分しか読みません。そうすると大抵のルールブックは、アンダーライン部分は全体の半分以下になります。つまり、それ以外の部分は冗長度の部分になります。ただ、これでも忘れそうな所だけチェックするようなアンダーラインの引き方をする人から見れば膨大な量と見えるようです。
で、大抵は再読する時は半分以下しか読む必要がないので楽になるのですが、時折、そうならないルールブックがあります。つまり、ルールとして必要な記述だけが大半を占め、冗長度の極端に低いルールブックです。こういう無駄のないルールブックを書ける人は、頭の中が良く整理されているのだと思っています。で、ラレギアマリーナは、正にそのタイプでした。正味7ページほどしかありませんが、全体の7割くらいがアンダーラインになってしまいます。ですから、普通のルールブックの密度で記述されていれば、10ページ以上はあって良いような中身だと言うことです。
こういうルールブックを書ける人の作るゲームは、なかなか期待できるのではないかと思い始めました。
ゲームシステム的には海戦に焦点を絞っています。上陸部隊と空挺部隊は登場しますが、目標となる沿岸ヘクスの支配を奪取するための一時的戦闘部隊と割り切っています。ですから、上陸後に陸路で進攻するようなことはなく、上陸したら勝敗にかかわらず除去されます。勝てば対象へクスの支配権を得られ、負けたら効果がないと言う違いだけです。
ゲームの中心部分は、海路を通じた補給線です。主要戦闘部分は地中海であり、枢軸軍の北アフリカへの補給が主題です。これに黒海が加わっているのですが、これは選択ルールになっています。黒海ではドイツ軍とソビエト軍の両軍が互いに最前線へと物資補給をしようとするので、話しが複雑になります。そういう意味では、初見では地中海だけやるのが妥当でしょうか。
ゲームはかなり抽象性が高くなっています。船団を組んでその移動をプロットするなどと言うことはしません。補給船団の航路は盤上にいくつか指定されていて、それぞれに対して毎ターン何ポイントを配分するかだけ決めます。すっきりしたものです。
で、戦闘艦艇だけを編成して、この航路上に移動して配置します。連合軍は航路上に戦闘艦艇を配置すると、補給船団の損害チェックをできます。枢軸軍は連合軍艦艇を捕捉、攻撃することができます。抽象的ですが、非常にプレイしやすく、地中海海戦で必要なマネージメントは最低限の労力で反映できると言う設計なのでしょう。
これに、前述した上陸部隊を輸送して敵地に橋頭保を築いたり、空挺部隊を降下させたりできる訳です。地中海海戦の全体をプレイする都合でスケールが粗いのは止むを得ません。そんな中では、実態は数時間で決着する海戦や空襲をどう表現するか、これがデザイナーの腕の見せ所です。本作では全体をプレイアブルに収めるために非常にドライな作業に集約しています。
ですので、プレイアビリティは良さそうで、慣れれば本当に2時間でWW2の地中海戦の全体ができてしまうかも知れません。ただ、これがゲームとしてエキサイティングかどうかはやってみないとわかりません。海戦で互いの船が撃ち合う醍醐味を求める層や、空母戦で索敵と出撃の緊張感を求める向きには受けないかも知れません。
そこはデザイナーの割切りで、そういうのはもっとスケールの緻密なゲームでやってねと言うことなのでしょう。
そもそも本作の狙いがDAKとの連結プレイにあるとすると、プレイアビリティを最優先にする必要があった訳で、そこは合理的な判断だと思います。