○セカンドハンドの時代を読む

bqsfgame2017-03-11

スヴトラーナ・アレクシエーヴィッチの最新作です。
図書館で借りてきて、期限までに終わらないので一部スキップして終りまで辿り着きました。
ソヴィエト連邦という国で生きた人々の肉声を集めた大著です。
一方で、範囲が広いので、ちょっと的が絞れていない感じがあります。
スターリンからブレジネフに至る旧ソヴィエトの密告とシベリア送りの時代。その前のWW2のドイツ軍とパルチザンの時代。アンドロポフからゴルバチョフに至るペレストロイカの時代。エリツィン以降の弱肉強食で、勝ち組と負け組に二分された時代。
読んでいくと、どの時代にも被害者がいて、理不尽な仕打ちを受けていたということが判ります。
そういう意味で、作者は、共産主義が悪いとか資本主義が悪いとか単純な議論はしません。
アルメニアアゼルバイジャンの虐殺の問題。チェチェン紛争。モスクワ地下鉄テロ。ベラルーシ大統領選挙不正抗議デモ。日本では認知度が低い問題も登場してきます。
雑然としている感じは否めませんが、本書を読むと西側で評価の高いゴルバチョフが、なぜロシアでは不人気なのかと言うのが良く判ります。そういう意味では以前に読んだ「ゴルバチョフ回想録」の裏側を知る資料としても貴重でした。
リーダビリティや、理解のしやすさという点では、「チェルノブイリの祈り」が圧倒的で、本書はそれとは反対側のヴェクトルにあります。しかし、それでもソヴィエト連邦の庶民の生の声を世界に届ける貴重な大作であることは間違いありません。これが日本語に訳されて読めるということに感謝します。