☆堅塁秀和を読む

久しぶりに古典打碁集です。

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きっかけは、朝日新聞のこちら。

https://www.asahi.com/articles/DA3S14547494.html

これで、大仙知の打碁を見たいと思ったのですが、そもそも積読の打碁集がたくさんあるのだから、それを有効活用しようと。

以前から半分くらい読みかけていた秀和を読み終わりました。

秀和と言うと、方円書庫さんのこちらの書評の印象を持っていました。

http://das53jp.blog38.fc2.com/blog-entry-157.html

どちらかと言えば、「あますのが上手」ですが、「いろいろな碁を打てて、どう打っても強い人」という感じです。

しかし、本書を一通り読んでいて、特に後半部では少し違う印象を持ちました。

とにかく明るいのです。対局相手や、筆者が、まだまだ形勢不明と思っている内に、「既に優勢」と判断して、足早に大寄せを打って形勢を確定してしまうのがコアコンピタンスと感じました。この形成判断の早さと正確さが余人を寄せ付けない。しかも、どんな碁を打ってもそれを正確にできるのが凄い。

実利好きの人はどうしても実利を高く評価しがちですし、大模様好きの人は模様を評価します。いろいろな碁を打って、どれも正確に形成判断できるのは、なかなか稀有な存在と思います。

第20局の「不争の勝ち」がその感じが判りやすいかと思います。

また、秀和は活躍期間が長く多作なのが大きな特徴。こうした棋士の打碁集を読むと、往時の囲碁界の移り変わりが見えるのも興味深い所です。

師匠である丈和、19才も年上の松和、弟弟子の秀策、弟子の秀甫。松和以外の天保四傑も登場します。

これだけの人が名人御所になれなかったのは幕末の混乱のタイミングになってしまったからですが、反対者だった松本因硯に負けた棋譜も入っています。

また、松和に白番で持碁にされた棋譜も参考譜ながら入っていて、同時代の他の名棋士の名局の対戦相手として秀和が常に登場することも判ります。

一般的な知名度では秀策に譲りますが、ちゃんと碁を判っていて読むのなら秀策より秀和の方が面白いのではないかと個人的には感じました。