今年の秋は、ルフトヴァッフェとしてロンドンを空襲する側でした。
しかし、本書を読むと、空襲された側のロンドンの人々の苦労が身に染みます。
p473
でも、あのときに来ていたら、VEデイをきちんと味わうことはけっしてできなかった。何年も暗い夜を過ごしてきたあとで光を見ることの意味は-接近してくる飛行機をなんの不安もなく見上げられることや、空襲警報のサイレンを何年も聞きつづけたあとで教会の鐘を聞くことの意味は-理解できなかった。この笑顔と歓声の裏にある配給と粗末な服と不安の歳月を知らず、この日を迎えるまでに彼らがどんな代償を払ってきたのかもわからなかった。
ウィリスの献辞にもある通り、バトルオブブリテンの勝利、第二次欧州大戦の勝利は、RAFだけによるものでもなく、チャーチルのものでもなく、ロンドンの人々、イギリスの人々の勝利だったのだと痛感させる小説です。