終わりました。
圧倒的な構造物です。
二回目で、ネタは割れているにも関わらず最初から最後までドキドキさせられました。大森氏はウィリスの最高傑作は「航路」との意見ですが、個人的には本二部作が凄いと思います。まぁ、ドゥームズデイも含めて、ウィリスはどれも凄いですが。
ポリーが正解に気付き始めてから、本当に最後のページまでに百数十ページもあります。こんなにまだあったっけか?と思いましたが、そこからが名場面の連続です。
p422
「別れる前に3つの質問がある」
ポリーは、「なにをお望みでしょう、わが君」
「われわれはこの戦争に勝ったのかね?」
知ってたんだ。ポリーは感嘆の念に打たれた。あの最初の夜からサー・ゴドフリーは真実を知っていた。
「ええ。勝ちました」
p429
「アイリーンはどこにも行かないっていった。約束したでしょ」
「ええ、覚えてる」
「残るって誓う?」
「誓う」といってアイリーンはビニーにほほえみかけた。「わたしが行っちゃったら、だれがあなたとアルフの面倒を見るの?」
ポリーはアイリーンに噛みついた。
「なんでビニーに嘘をついたの? こんなのフェアじゃない」
「そんなこといえない」
「どういう意味」
「わたしは行かないのよ」
p431
アイリーンは首を振った。「あれはわたしだった。わたしはあそこに行かなきゃいけないのよ。ほかのすべてが起こるように」
「他に方法があるはずよ」
「わたしが残ることにした理由はそれだけじゃないの。アルフとビニーがいるからよ。教区牧師さんに約束したの。ふたりの面倒をみるって。彼の信頼を裏切るわけにはいかない」
p433
「わたしたちの居場所をコリンに伝えたのはわたしなのよ。そうじゃなかった?」
コリンが返事をしないでいると。
「戦後、コリンはわたしを見つけ出し、わたしがあなたたちの居場所を教えた。そうじゃなかったら、ここを見つけられなかったはず。だから、わかるでしょ、わたしは残らなきゃいけないの」
p438
ビニーは抵抗した。
「あたしもお別れをいいたい」
「そうだよ」アルフも姉の横に「ぼくらにもさよならをいう権利がある」
そのとおりだ。ふたりはまちがいなくその権利を自分の力で勝ちとった。救急車を運転し、地図と落ち合う場所を提供し、アイリーンが降下点に行くのを妨害した。ダンワージー先生を足止めし、それ以外にもいろんなことを邪魔し、妨げ、止めてきた。
p470
そのときポリーが見えた。ほんの2,3メートル先を、人の流れに逆らってチャリングクロス駅の方に向かっている。記憶より若く見えた。のちにその顔に刻まれる悩みも悲しみもまだ知らない、コリンがあらわれたあの夜の喜びもまだ知らない表情。
p474
「お捜しになっているのはこのふたりですか、マダム?」うしろから男の声がしてふりかえると、従軍司祭がふたりの子供を連れていた。片手はビニーの肩の上、もう片方の手はアルフの襟をぎゅっと握っている。
「すごいひとを見つけたんだよ!」とアルフがうれしそうにいった。「牧師さん!」
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本書を最後まで読むと、作者が一番のご贔屓はホドビン姉弟と言うのがとても良くわかります。「ブラックアウト」しか読んでいない人(そんな人はいないと思いますが)には理解できない話しではありましょう。
個人的には初読の時と同じく、サー・ゴドフリーに尽きると思います。
前述のp422に尽きます。
本当に最初の夜から全てを知っていたとすれば、真に恐るべき存在です。
つづく