千葉会:ナポレオン退却すを対戦プレイする

DRAGOONさんと、久しぶりのライブラリーオブナポレオンです。

シナリオは、クラオンヌのDoB(Day of Battle)です。クラオンヌの北マップのみを使用します。

フランス軍のナポレオン本隊(ネイ、ヴィクトール、グルーシー)と、連合軍はロシア軍前哨部隊がクラオンヌ南方の街道にて激突します。

連合軍側の指揮系統の特別ルールが滅茶苦茶です。総司令官のブリュッヒャーは心臓病でダウンしています。臨時代理としてロシア軍のトップであるランゲロンを任命しようとしましたが、ランゲロンは拒否しました。結果として、二人とも本シナリオでは盤上に登場しません。

なので、ロシア軍は3人の現場司令官(軍団長)が自力で指揮チェック(士気チェックに非ず)して行動できるかどうかを毎ターン判定します。この3人の指揮値が、4、3、2となっており、4は良しとして、2だと1/3の確率でしか動きません。こんな状態では攻勢に出られず、指揮系統が完全に機能しているナポレオン本隊に逆に押される展開となります。「おいおい、『ナポレオン退却す』じゃないのかよ?」とボヤきたくなります。

結果としてシナリオは途中終了、判定でフランス軍有利との合議でまとまりました。しかし、ロシア軍砲兵隊によるフランス軍の損耗が少しずつ重なりそうで僅差と見られました。 

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さて、本作をボックスに入っているチャート類でプレイした所、世間に流布している日本語版と大きく異なっていることが判りました。本作のシリーズルールは、7.36だそうで、世間で流布しているものは6代のヴァージョンなので誤訳ではなく、本当に改定変更されているようです。

特に大きく影響して記憶に残っている部分を挙げます。

シャトーの地形効果が激変しました。

以前のシャトーは、騎兵や砲兵は進入禁止で、歩兵のみが進入して防御力2倍でした。

現在のシャトーは、騎兵や砲兵も進入可能ですが、それをしてしまうとシャトーの戦闘効果が無効になるという扱いになりました。結果として、シャトーを有効活用しようと思ったら歩兵だけ入れることになります。

また、シャトー防御時に発生した全てのDR(DR2、3、4)はSkに変わるというルールになりました。従来はDR*だけだったようですので、シャトーは大幅に退却させにくくなりました。このことから問題が発生するので後述します。

砲撃表が変わりました。

以前の砲撃表の最大欄は7火力以上までしかありませんでした。

現在の表には10火力以上という欄ができました。これと関連していると思われますが、砲撃は複数の砲兵ユニットによる火力を合算するようになりました。

また、現在の表には、以前にはなかった「S」という結果が「DR」の下に設けられました。「suppressed」の略で、効果は次のターン中は指揮崩壊状態になるというものです。そんなこんなで、砲撃は従来よりも強くなりました。

 

さて、フランス戦役でフランス国内に入ってきたことで、あちらこちらにシャトーがあるようになりました。今回の決戦場付近にも多くのシャトーが見られます。どちらであるかは別として守備方はシャトーを利用して戦線を張ります。攻撃方はシャトーを攻撃しなければ、なかなか前へ進めません。なので、シャトー攻撃が必然ですが、ここで問題が起こります。

本シリーズは、NAWの発展形(既に原形とは大幅に変わっていますが)ですので、超強ZOCです。マストストップ、マストアタック、戦闘結果以外で離脱不可です。

シャトーを攻撃する。シャトーは退却しない。そうすると、増援はできても、戦力を引き抜くことはできずに、攻撃を継続するしかありません。そこまでは問題ありません。

ところが、ナポレオン本隊が攻撃側になると、親衛隊を投入した時におかしなことになります。親衛隊が攻撃して、AE、AR、EXを受けると、「親衛隊、ついに敗れる」の報で近辺(10ヘクス以内)のフランス側フォーメーションの士気崩壊水準が大幅に下がってしまうのです。

戦闘比3対1では、ARもEXもないので、フランス軍はこの戦闘比で攻撃を開始します。ところが、シャトー側がステップロスだけして踏みとどまります。上述した通り、攻撃側は兵力を増やすことはできても、減らすことができません。結果として、戦闘比は上がっていき4対1では6の目で、5対1以上では5、6の目でEXが発生し、ナポレオンフランス軍を支えてきた親衛隊不敗神話が崩壊してしまうのです(結果としてフランスはシナリオに敗北する公算が高い)。

プレイ中に実際に発生したのですが、こうなると連合軍は上記が発生する公算が高いので、問題のシャトーを救援しない方が良いことになります。早く戦闘比率が上がるのは(そしてEXが発生するのは)、連合軍の望む所だからです。

そうだとすると、フランスプレイヤーは親衛隊をシャトー攻撃投入するのはリスクが高すぎるという結論に。

しかし、シャトーの防御効果を打ち破って勝つには親衛隊なしでは、かなり無理があります。だとすると、フランス側は有効な攻撃を与えることが難しいことになり、結果として砲兵隊によるノーリスクの砲撃戦だけするなら砲兵火力に勝る連合軍が有利ということになります。しかし、本格的な戦闘をせずに、砲兵だけポンポンと撃ち合って出る損害の多寡で勝敗が決まってしまうとすると、とてもエキサイティングとは言えないのではないかという議論になりました。

なんか、数列の収束性の講義をしているかのような議論を一時間近くもして上記の結論となったのですが、この議論に大きな間違いがないとするとクラオンヌシナリオをプレイすることはもうないかも知れません。

 

末筆ですが、ライブラリーシリーズのルールが、既に版数を7まで重ねているにも関わらず、軽微という表現を越える変更があるのには驚きました。どなたか、戦闘結果表、砲撃表、地形効果表(移動/戦闘)と、それに関わるルール補足部分だけでも最新版の和訳を作って流布していただかないと、新版ルールのゲームをデザイナーの意図通りにはプレイできないことを指摘しておきます。