石原藤夫先生です。
再読、文庫版です。
ヒノシオの惑星シリーズをまとめた短編集その1です。
出世作である「ハイウェイ惑星(高速道路)」を筆頭に惑星シリーズばかり5作品を集めた1975年のハヤカワ文庫。
石原先生は経歴からハードSF作家と呼ばれることが多いのですが、改めて読んでみるとハル・クレメントや、グレッグ・イーガンとは、明らかにテイストが違います。
惑星開発公社に勤める調査課の二人が、公社が開発予定の惑星を調査する話し。大体において特殊な環境、その環境が育んだ奇態な生物がいて、おかしな方向に物語が脱線していきます。
テイスト的には、SF落語という感じでしょうか。
長屋のはっつあん、くまさんと言った趣き。課長は大家さんですね。
50ページほどの短編が5本で非常に読みやすいです。
「ハイウェイ惑星」
文字通り整備されたハイウェイが惑星上を網羅しています。この環境で進化した謎の車輪状生物の生態を騙る奇妙な味の一作です。
「安定惑星」
生物のホメオスタシス類似の仕組みで絶対的な安定状態を達成している惑星です。その状態でご主人様の帰りを待っているらしいのですが、その完全無欠な所を逆手に取って自己崩壊させる話し。「スタートレック」あたりでも見掛けたような展開。
「空洞惑星」
ペルシダー型空洞惑星にて、無重力怪獣が暴れているという原住民のSOSを聞いて対応に向かったヒノシオ。惑星の構造、無重力の仕組みを解いて、怪獣退治までやります。
「バイナリー惑星」
連星を回る惑星に珍しく発生した分裂増殖する知的生命の存在について確認しに行きます。しかして、その実態は有袋類の極限化したかのような雌雄異体の疑似群体生物。
「イリュージョン惑星」
これが一番、石原先生らしいでしょう。
無人貨物船の荷物が盗まれたのを解決しに行くのですが、盗難時の一枚の写真から推理をすると言うものです。
ローレンツ短縮は時空間的に正しく本当に発生するが、それを光学的に視認することはできないという相対論の実学部分の一発ネタに近いです。
なんでまた今になって惑星シリーズをという感じですが、ヤフオクに未読分が出ていて落札したのを機会にシリーズ第一作を読み直してみました。