☆すべての善きベムがを読む

ブラウン短編全集の2冊目です。3巻から2巻へと遡りました。

本全集は執筆順編集ですので、少し若い頃に戻ったことになります。

全体の印象としては、3巻よりこちらの方が粒揃いだと思いました。

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1:ふまじめな星

シリウスの1番内側を回るシリウス1。その内側には惑星はないはずなのに、なぜかコンソール一杯に見えてきた惑星。

これをシリウス0と称するのですが、この実態がシリアスさゼロの不真面目な星だという一種のダジャレネタです。

2:ユーディーの原理

電池一つで動き、脳に装着することで、所謂「緑の小人さん」効果をもたらすことができる新発明。その実態は超高速で自分が望む仕事を片付けてしまい、早すぎて誰の目にも止まらないし自分の記憶にも残らないという優れもの。

のはずだったのですが、実は手品師の口上よろしくユーディーという便利な妖精がやってくれるということにしていました。ところが、その妖精をうっかり高速活動中に撃ってしまったので‥。

3:闘技場

少し前に話題にした「怪獣ゴーンとの対決」の原作。スタートレックでは簡易ロケット砲を発明して勝利しますが、こちらはもっと原始的です。でも、この原始的な勝ち方の方がSFしているような気がするから不思議なものです。

4:ウェイヴァリー

電波生物による地球侵略を描いた短編。電気を吸収してしまうため、あらゆる発電所は発電する端から電気を吸収されてしまい給電できません。

5:やさしい殺人講座

6:夜空は大混乱

突如として夜空の星が地球から見て動き出すというお話し。そして、その結果は。

おー、恐るべしアメリカン・マーケティング

7:狂った惑星プラセット

二重太陽を8の字軌道で回る上に、重力場の影響で光速が音速より遅いという、とち狂った惑星。しかし、お話し自体はシンプルなラヴストーリー。

8:ノックの音が

星新一の同名短編集のもとになったオリジナル。地球最後の男がくつろいでいると、突如ノックの音が。寡聞にして、このオリジナルのオチを知りませんでした。こういう話しだったのですね‥(^o^)

9:すべての善きベムが

今回の表題作に選ばれた一作。アイデアが出なくて悩む作家がオープニングだけ思いついたのが表題。しかし、ブラウンのこと、すんなりお話しが続いて出てくることはない。

10:ねずみ

これも侵略もの。いわゆる「レリクス」系の侵略者が、ねずみ酷似の生物をキャリアーにして侵入してきた。

11:さあ、気違いになりなさい

これも有名短編。

精神病院に患者として潜入する命を受けた記者だが、実は彼はナポレオンの生まれ変わりであることを隠しているのであった。

12:1999年の危機

犯罪小説もブラウンが書くとこうなるという佳作。

シカゴでは重大犯罪の検挙率が低下し、一方で発生率はそれ以上に低下している。その原因とは?

13:不死鳥への手紙

いわゆる長命者もの短編。

人類文明は発展すると最終戦争を起こし、その灰の中から立ち上がって新しいサイクルを始めるフェニックスのような存在だという話し。そうした文明だけが永続性を持ち得るという考察が興味深い。

14:最終列車

不思議な味わいのショートショート

どういうことだったのかは読む人の推測に預けられている。

 

2,3,4の3本は名門アスタウンディングの掲載作品。

5、12は推理小説系雑誌掲載作品。

アンソロジー収録作品や、短編集表題作品も多く、なかなか質が高い。一冊読むのなら3巻よりもお薦め。