リアル書店買い。
竹書房文庫の棚を見たら、なんと草上仁さんの新作が!
草上先生の単行本未収録短編が増えすぎているので消化しようという企画なのだそうです。これが2冊目で、1冊目が「キスギショウジ氏の生活と意見」だそうです。全然アンテナに引っかかっていませんでした。
「スタートピストル」
ロボットの性能が上がってしまい、ついに人間同士の競技ではなくロボット同士を競技させる陸上競技世界。そこで名伯楽ぶりを競うというのです。ちょっと競馬みたいなテイストです。
「スカイダイブ」
スカイダイビングではあるのですが、刺激を求める未来社会で高層ビルからダイブして肉塊として粉砕されるのを競うというグロい競技。もちろんクローンが用意されていて、後天記憶も最後の瞬間まで転送する仕組みです。ところが、事故率が一定程度あって、主人公はリザーブのはずの自分のクローンが一緒に飛ぼうとしているのを発見して愕然とします。
「大酋長」
アメリカ大陸でマンハッタン島をガラスビーズで買い付けた史実を踏まえて、原住民のいる惑星で土地を二束三文で買い付けようとして逆に大酋長たちに騙されてしまう話しです。
「ハパンサペナ」
辞書に載っていない単語を使用する者は言語犯罪者として厳しく処分される世界の話し。主人公は「ナンセンス」という意味で「ハパンサペナ」を使用し逮捕されますが、取調官を騙して彼にも使わせようとする落語のような一編。
「顔」
交通違反で免許証を見せたら警官が免許証の写真と顔が違うと言い出す。続いてパスポートでも同じことが。さらに帰宅すると妻が認識してくれなくなり‥という恐怖譚。
「大人になる時」
思春期で大人になる時に性転換するヒューマノイドの話し。その時期に引っ越して転勤することで初恋の相手と離別する社会習慣がある。ちょっと淡い青春譚のように見せている意地が悪い一編。
「犬のプレゼント」
絶滅危惧種の犬を過剰に保護している近未来社会。犬を轢いてしまう幻を見たことから崩れていく夫婦関係。「最後のウィネベーゴ」を連想させます。
「自分殺し」
クローンが用意され、後天記憶も転写する近未来。妻とクローンが結託して自分が殺されてしまう話し。
「妻の味」
心を病んで心を閉ざしてしまった妻の唯一のコミニュケーションが料理の味だという話し。
「皮まで愛して」
生物が苦手な彼女が唯一関係を持つことができたのは、主人公の日焼けで剥けた皮だけだったというショートショート。
「バディ」
植物とバディを組む受粉相互利益関係の昆虫人間のお話し。
「ワクチン」
植民惑星に届いたワクチンを使うかどうか迷う現地責任者。彼が懸念しているのは、ワクチンこそが低毒化して宿主と共存して生存圏を広げようとしているウィルスの策謀ではないかと言うこと。ウィルスにそんな知恵があるのだろうか?