ポール・アンダースンです。
講談社の「世界SF大賞傑作選6」から。
このアンソロジーはアシモフ篇で、訳者はいろいろです。本作は1972年のヒューゴー、ネビュラ、ローカスのトリプルクラウンのノヴェレット。本編は矢野徹さんの訳です。
辺境の開拓惑星で子供を攫われた母親が私立探偵を頼む話しです。その結果、用心深い先住民が見つかって、それを統べているのが女王です。
アンダースンは出自から北欧神話モチーフのものが散見されますが、これもその一つです。なにかSF的な謎解きがされる訳ではなく淡々と終りますが、最後に母親と探偵が結ばれる所がちょっとしんみりさせます。
子供を攫う青羽根と呼ばれる妖精も、もとは攫われた子供らしく、人類の入植に伴って子供を調達して生き延びている先住民という不思議な生き方が独特の味わいを持っています。トリプルクラウンと言うほどには感激しませんでしたが佳作と思います。訳が矢野さんでなければ、もっと良かったかも。