〇愛されたものを読む

 「街角の書店」に入っていた「ディケンズを愛した男」のイーヴリン・ウォーの長編です。図書館にあったので借りてみました。

 岩波文庫の赤なのでリーダビリティには不安を感じさせましたが、読んでみると割に読みやすい本でした。そもそも210ページしかありませんし。これも、奇妙な味のする一作ではあり、読んで損はさせない水準には届いています。

 アメリカ西海岸に移住してきたイギリス人コミュニティーの話しです。

 主人公のデニス・バーローは、ペット葬儀の新興会社「幸せの園」に勤めています。同居人のアメリカ人が死亡し、その葬儀を取り仕切ることになります。そこで、葬儀ビジネスでもっとも成功している「囁きの森」に頼むことにし、そのノウハウを勉強しようとします。

 そこで知り合った遺体化粧師のエイミーと交際し始めるのですが、エイミーは遺体修復師のジョイボイ師を尊敬しており、彼に女性初の遺体修復師に推薦されてあっさりとデニスを袖にしてしまいます。二人の男から愛されたエイミーが「愛されたもの」なのは自明ですが、結局、彼女は二人の男の間を往復した末に自殺してしまいます。

 イギリス人の話しで、葬儀関係の話しというので、コンプトンの「人生ゲーム」を彷彿とさせました。後半はちょっとあたふたして混乱してきて少しPKD風でもあります。

 ウォーの作品は他にも図書館にあるのですが、ちょっと大物の再読が控えているので続けては進まない予定です。