ラファティの初訳作品を集めた短編集です。図書館。
ラファティを買わずに図書館で済ますことは個人的には昔なら考えられませんでした。
初訳を集める都合でキャリア末期の物が多くなっています、全9編。
訳者は井上「こどもたちの午後」央さんです。
ラファティは翻訳が進んだ作家なので、未訳作品に傑作があまり残っていないのは止むを得ませんが、まぁどれもラファティしてはいます。
「とうもろこし倉の幽霊」
巻頭表題作ショートショート。犬のシェップが倉に近づかないのは、そこで幽霊を見たことがあるからだというお話し。
「下に隠れたあの人」
いわゆる人体消失術を使う大魔術師、チャールズ・チャーテルのお話し。と言っても「奇術師」みたいなネタあばき合戦ではなく、表題作同様に誰が本当のことを言っているんだろうという与太話。下に隠れたと言うのは、消失術のトリックとして落し蓋があって中にいた人は舞台下に隠れたからということです。
「サンペナタス断層崖の縁で」
サンペナタス崖の上から飛翔する突然変異の子供たちについて語る与太話。
「さあ恐れなく炎の中へ歩み入ろう」
奇妙な魚(別名イクチオ人)と呼ばれる亜人類の親子に関するラファティ流歴史小説。集中で最長。この着想だけで延々と語り続けられるのがラファティの芸ですが、いささか中身が薄すぎて持ちこたえきっていない印象も。
「王様のくつひも」
テーブルの下に潜んで会話する実在する謎の小人たちのお話し。
「千と万の泉との情事」
五十年かけて一万もの泉の精と出会ってきた男の話し。
「チョスキーボトム騒動」
チョスキー河の川窪に棲む謎の生き物「せっかちのっそり」がフットボールチームに入ったことで起こるいろいろなトラブルを延々と描いた作品。集中では個人的にお気に入りです。
「鳥使い」
渡り鳥に渡りのタイミングを教えるヘラジカの妖怪が、10才の少年の姿に変身して雲に腰かけて釣りをする話し。なぜ10才かと言えば、10才を越えると鳥の言葉が判らなくなるからだそうな。これもお気に入り。
「いばら姫の物語」
眠れる森の美女の物語の起源を研究したショートショート。