☆御用金着服を読む

 大富豪同心17です。図書館の分館。

 シリーズを支えてきた悪役であるお峰と天満屋がいなくなり、一体どうするのだろうかと思っていました。

 今回は前回の北関東水害の後始末です。筆頭老中の追い落としのために水害の責任を負わせて自分が救世主になろうと目論む新進気鋭の若年寄り、信濃守。

 ところが、堤防再建のために公金を送り込んでも一向に水が退く気配がない。そこで、若手の切れ者、四郎左衛門を現地に検分にやります。

 問題の公金は、なんと卯之吉が横領して満徳寺での炊き出しの米を買うために使ってしまったのでした。

 時同じくして上州に入ってきた熊のような大男と相方の二人の薩摩武士。彼らの狙いは卯之吉だと言うのです。熊男の川の原どんの怪力無双を生かした薩摩示現流は、宿場の侠客を相手に炸裂し、刀で受けようとした侠客のその刀を押し込んで彼の頭蓋骨を割ってしまう程の威力。

 卯之吉の一番の守り手である美鈴は、腕は立つもののいかにも非力で、こんな化け物には敵わない?

 かくて、信濃守、その同盟者である薩摩藩の隠居老人の思惑と戦うことになる卯之吉一行ですが、熊男は水谷と刺し違えになり、卯之吉の目論見はまず人々に食わせた上で放水路を工事させるという形で成功し、万事まるく収まります。

 倉賀野宿の侠客、辰兵衛一味は卯之吉が横領した小判を隠すために溝を掘っていると誤解し、誤って放水路の最後の壁を破って卯之吉の工事に協力して流されて死んでしまいます。ここらへん、「スティング」のようなコンゲームものの鮮やかな切れ味で読ませてくれます←褒めすぎ?

 薩摩藩との確執は続くのですかねぇ。薩摩示現流を敵に回すのは荷が重いですね。