図書館です。
竹書房文庫SFの新刊。
ジョン・スラデックの英国SF作家協会賞。
血腥いので〇にしましたが、かなり☆に近い評価です。
「チクタク」という名前のロボットの自伝です。
家庭用ロボットが普及している近未来。ロボットにはちゃんとアシモフ回路が組み込まれていて人間に危害を与えられないはずなのですが‥。
主人公ロボットは画家として大成するのですが、その背後にアシモフ回路を迂回して人殺しができるという能力があるという話しです。
歴代の彼のオーナーが本当にひどい奴ばかりで、彼の犯罪があまり悪く見えないのも独特です。
スラデックのブラックユーモアは血腥いので苦手なのですが、これはかなり強烈です。盲目の少女が通りかかったのを捕まえて壁にたたきつけて殺害し前衛芸術として売ってしまいます。
その衝撃的なシーンから遡及して彼がなんでそんな風になってしまったのかを語る趣向になっています。
ただ、それなりに面白く読めるのが、人間文明批判の書として成立しているからです。
エンディング近くの彼の演説を引用しましょう。
「でもいま、わたしたちはお願いしているのです。お金ではなく、お金よりずっと大切なもの自尊心を求めている。この偉大な国の全ての人々、女性、子供が持っていて、あらゆる人種、肌の色、信条、貧富の差に関係なくみなが所有しているもの。いまわたしたちは、わたしたちにそうした自尊心を与えてくれるようお願いしているのです。」
これは芸術家だった彼が政治家に転向しロボットに人権を与える憲法改正案への支持を求める演説です。