11月のNHK杯囲碁トーナメント

 3日は、井山王座に洪5段が挑みました。
 大阪の二人なのですが、なぜか解説は金秀俊9段。
 金先生の解説を久しぶりに聞いた気がしましたが、割と無難に纏められていました。両者の棋風についてのコメント、それが反映された着手の指摘は良いですね。
 白の井山王座が3隅を取って地で先行した辺りで、洪先生は望まない打ち込みをして攻められる被告席に立たざるを得なくなりました。この辺のイニシアティブの取り方の上手さに関する解説は非常に的確だったかと思います。
 打ち込んでイニシアティブを取るのではなく、打ち込まざるを得なくさせて取るという所がアマチュアには難しいのです。
 黒の洪先生は、それでも終盤まで持ち込みましたが、途中で地合いが足りないのがはっきりしてきて、どこで投げるか考えられているのかなと思ってみていましたが、やはり頃合いを見て投了。放送時間を考えて、あまり短くなりすぎないように配慮されたのかと思います。
 洪先生も今はかなり打てていると思うのですが、やはりと言うか井山王座には勝てませんでした。

 10日は今度は関西棋院同士。村川九段に呉柏毅六段が挑戦。一度も勝った記憶がないという呉六段でしたが、中盤、下辺で石が競り合ったときに右側の黒にカケて出させて、その調子で自分も出た手段が良かったようで、それまで黒勝率80%の局面が白勝率70%まで一気に逆転しました。後は手堅く打ち進めて村川九段の投了となりました。
 小池7段の解説でしたが、昨年に続いて地味地味ですが、割とうまく解説されていました。近年の戦績が良い人は、やはり手が見えていますね。
 余談ですが、14日に安田さんが今季2勝目を新人王戦で挙げました。おめでとうざいます。でも、11月半ばに今季2勝目って‥。頑張ってください。
 また、同じ日に村川九段が名人戦最終予選決勝を勝って久々(5期ぶり)のリーグ復帰を決めました。これで、来年以降も解説に無事にご登場いただけそうです。

 24日は、伊田、依田対決。解説が石田本因坊、聞き手が安田さんと、田の付く4人が揃いました。で、対局者は読み仮名が二文字、解説と聞き手は三文字。まぁ、田の付く名前は多いとは言いながら、これだけ集まるのは確かに珍しい。
 碁のほうは予想外に渋い碁になりました。石田解説者も伊田九段の切った貼ったを依田先生がどう捌くかの碁と予想していましたが、全然そうなりませんでした。
 中盤に入った辺りで左下の折衝で伊田九段に読み違いがあって中央の6子が切り離されて白の厚みのなかに置き去りになって頓死。「失敗したなって顔してますね。わりと顔に出るタイプなんですね」とは石田解説者。
 しかし、白の依田先生が黒の右辺に打ち込んだ手段が重くて、ここで形成急接近からAIによると逆転しました。打ち込んだ瞬間に、「この手段は重いですよね」とは、やはり石田解説者。AIが昭和の棋士の石の効率の感覚に同意するのは初めて見たかも知れません。どっちを褒めるべきか良く判りませんが。AIの形成判断が石の効率を含んでいるということは認識を新たにしました。
 碁のほうは伊田先生が勝ち切りました。依田先生のヨセに不手際があったようで、終盤で差が開いたようです。数年前に清成-依田戦で解説の覚九段が「計数的な部分では清成先生の方が精確だね」と言っていたのを思い出しました。当時は覚理事長と依田先生の対立が深刻だったので、嫌みで言っているのかと思ったのですが、確かに一時代を成した先生にしては不手際が目立ちました。
 12月の解説者に、その覚九段が登場します。また、ご贔屓の首藤八段が今期二度目の登場をするそうで、大いに歓迎しております。同じく関西棋院の瀬戸先生も二度目の登場。少数精鋭で回し始めましたかね?
 それとは別に本稿をアップするのが遅れていたら、藤沢里奈結婚の報が入ってきて驚かされました。相手は予想外の人でした。

 上野愛咲美立葵杯の呉清源杯優勝の朗報と共に女流囲碁界はおめでたいこと続きです。