SFマガジン1998年1月号を読む

 ちょっと訳アリの号です。

 SFマガジンの創刊500号記念の前編、海外SF編の号です。すごいラインナップで、発売当時に買いました。本ブログに何度か登場してくる当時付き合っていた彼女の家に泊まる時の読み物として置いておき、そのまま別れてしまったのでロストしてしまいました。

 しかし、なにかにつけて本号収録短編を読みたいと思う機会があるので、マーケットプレイスで再購入しました。

「世界を我が手に」

 PKディックの短編です。「フェッセンデンの宇宙」のディック・ヴァリエーションです。スノウボールのような自分専用の世界を育成するコンテストの話しです。

 ところが、「たまごっち」もそうですが、どうしたものか自分の愛する作品に天災をもたらす仕打ちをしたがる人が居て‥。

「今日もまた満ち足りた日を」

 ジョン・ヴァーリイの短編です。同じ一日を繰返すという「トグシノ」や「時間飛行士へのささやかな贈り物」と同じ設定です。

 ヴァーリイがまだ病的でない時代の好編。

「パイン・キャッスル」

 RAラファティ。本号に原稿依頼されていないのにお祝いを送ってくれたと言いますからラファティの日本好きというのは本物です。

 作品は、人間の原初的な恐怖でいちばん怖いのは何かを語り合う夜の酒場の奇譚。

「迷信」

 ポール・アンダースンです。科学が後退し魔法が世界を支配しており、魔法の力で宇宙飛行する魔女のラブストーリーです。こういうのを書かせると実に気が利いているのがアンダースン先生の素晴らしい所です。

「穴の中の穴」

 テリー・ビッスン。「ふたりジャネット」にも収録されている、ヴォルヴォの部品を見つけられる部品屋を探す話しです。

p314

「『穴』のフランキーのとこを紹介してやれよ」

 カウンターの奥のヴィニーはかぶりをふった。

「見つかりっこないさ」

 おれはもうひとりのヴィニーのほうにむきなおって、

「『穴』のフランキーのとこって?」とたずねた。

「フランキーは小さなジャンクヤードをやってるんだ。ヴォルヴォ専門。『穴』を知ってるか?」

「知ってるとはいえんな」

「知ってるはずないよな。行きかたを教えてやる。よく聞きな、近ごろじゃえらく見つけにくいし、いっぺんしかいわないから」

 

 このヴィニーに教わったことを一から十まで述べるはおろか、思い出すことさえできない相談だ。ロッカウェイ・ブールヴァードをわたってから、ベルト・パークウェイの下へ戻り、側道に入って、コンジットへUターンするが、センターレーンに留まって、鋭く左折して袋小路にはいったら、未舗装道路をたどって急勾配の土手をくだり、立木と灌木の林を抜ける、といえば、あたらずとも遠からずだろう。

 おれは教わった通りにした。すると、うらぶれた一角に出た。

「バケツ一杯の空気」

 フリッツ・ライバー。本作を表題作とした短編集がサンリオSF文庫から出ていましたが未読で、今回が初読。

 太陽周回軌道から放り出されて絶対零度に近い環境になった地球の未来譚。本当に空気が液化していてバケツで汲んで来れるという設定です。ライバーは怪奇・幻想作家に近いと思うのですが、突如としてSFらしい設定の作品を書いたりする不思議な才能の持ち主で、これはその最高傑作と言って良いでしょう。

「配られたカード」

 ロバート・ソウヤーの独立短編。

 確実に当たる占いが存在する世界で、生まれた時と成人した時に必ず占ってもらうことが義務となっている世界。その世界で占い師が殺されたのはなぜかという動機推理ミステリーです。

 ソウヤーはちゃんとしたSFの設定の中でしっかりミステリーを書ける稀有な才能の持ち主ですが、その一例。惜しむらくは、もっと長く書き込んで欲しいところですが。

 

 以上で、読みたかったものは一通り読み終えました。

 全体的に、さすがの打率でした。昔は本当に良い短編がたくさんあったものですね。