○レコスミコミケを読む

図書館。海外SFノヴェルズ版です。

f:id:bqsfgame:20210323082711j:plain

高山羽根子さんが選んだハヤカワ文庫SFの一冊。

イタリアのイタロ・カルヴィーノの短編集です。

カルヴィーノはサンリオSF文庫で見掛けたので、アントニイ・バージェスなどと近いのかと思っていました。全然、違います。

幻想怪奇譚の一族ですが、本短編集では宇宙サイエンスの一端から発想したものが並んでいます。

一緒に借りた別の本が読みにくくて時間切れとなり、半分の6編だけ読みました。

「月の距離」

月が潮汐の影響で地球から遠ざかっているのは科学的事実。そこを逆手に取って、昔は月は脚立に登れば手が届くくらい近くにあったんだよという与太話。

で、月に渡ったまま帰ってこれなくなった彼女の思い出話しに。

他愛ないけれども、これは感心しました。

皆で月に渡るために沖に漕ぎ出していく所が笑ってしまいます。

「宇宙にしるしを」

銀河系も公転していることは事実。

そこで、銀河開闢直後に公転を確認するために、宇宙空間にマークをしたという与太話。しかし、どんなマークを付けたかあまりに一週に時間が掛かるので忘れてしまったとか、悪いヤツが居て他人のマークを消すヤツがいたりとか。どこからこんなことを思いつくのか。

「ただ一点に」

 ビッグバン以前には全てが一点に存在していて、時間も空間もなかったという仮説が事実であったと語る謎の主人公。

その頃はみんな同じ場所にいて、いろいろとややこしかったもんだという与太話。

「恐竜族

たった一匹だけ生き残った恐竜が、新種族に紛れ込んで暮らし始める話し。誰もが恐竜の恐ろしさを知っているのに、誰も彼が恐竜ではないかと疑わない。

そんな彼が恋をしたことで、結ばれぬ悲恋物語に。

「空間の形」

永遠に平行落下を続ける一群の人々。平行落下なので誰とも距離が近づいたり離れたりしないのだが、そんな状況での悲恋物語

「渦を巻く」

巻貝が進化する過程の苦悩と、他者から見ると美しい幾何学模様も、本人たちには特別な意図はなく、自分で認識することすらできないという悲哀。

 

全体的にラファティみたいな与太話しが多いが、もっと純文学より。

これを読むと「首里の馬」の発散した感じは、失敗したのではなく狙って書かれたものだと得心が行きました。

なかなかに興味深く読めたので、他のカルヴィーノ作品も読もうか、ちょっとだけ検討中。