サンリオSF文庫、蔵書です。発売当時(1981)に読んだきりの再読です。実に40年ぶりということになります。
ネタバレしますので、読みたくない方は此処までで。
☆にしようかどうか、途中までは迷いました。
しかし、最後が慌ただしくバタバタと幕じまいした感じが否めず、○が妥当かと。
同じようなことを以前も書いたなと思ったら、同じボブ・ショウの眩暈です。
サンリオSF文庫のショウ長編の中でも最初の一冊です。
なので、著者の来歴や作品リストなどが充実しています。
意外に思うのは、著者がもっとも影響を受けた作家として、ヴァン・ヴォクトの名前を挙げていることです。バリバリのアメリカンSFであるヴォクトからしっとりしたイギリスSFであるショウが生まれるとは信じ難いものがあります。
ショウ作品は、意外なほどしっかりしたSF大道具を使用します。
「ボロボロ宇宙飛行士」では、大気圏上層部を共有する二重惑星の間を熱気球で惑星間航行する世界が描かれました。
「眩暈」では、半重力パックが普及した世界で、暴翔族を検挙する警官のトラウマ克服を描きました。
スローガラスについては言うまでもありません。
本書では、ドラゴントライアングルやバミューダトライアングルと言った消息不明事故の相次ぐ海域について、実は地球温暖化時の海面上昇を調整するために何者かが設置した海水の太陽系内宇宙空間への転送装置だという話しが登場します。
そこから出発して、転送された海水と一緒に宇宙空間に放出された人類やイカが純粋な海水塊の中で生存して独自の文明や進化を遂げているというのです。
すごい設定を考えたものです。
この大道具に加えて、いつものショウの重厚な人物描写。
これで217ページしかないというのですから、ボリュームが足りる訳がありません。
結果として、いろいろと説明不足になっていますし、特に最後のクライマックスの展開は、非常にバタバタしていて勿体ないことありません。
この設定と人物で、せめて300ページ強まで書いてくれていたらなぁ‥と思うのですが、既に作者は二十世紀末に鬼籍に入ってしまいました。
幸いにしてショウは多作だったのですが、残念なことにさっぱり翻訳が進みません。後は原書で読むしかありません。
うーむ‥(^_^;
ただ、比較的読みやすい部類に入ると思いますので、読んで読めなくはないのですが‥。