安斎七段のAI棋書その2です。
今回は中盤戦。
本書は抜群に面白く読めました。
「AIが何を考えているか?」に肉薄した内容となっています。
AIの打ち方を見て、外勢重視だなという漠とした印象を持つのは容易です。しかし、踏み込んでみて行くと、そう単純ではない。なぜ、外勢重視の知能が、ダイレクト三々をいきなり打ってくるのか? その質問に答えられなければ本物ではありません。
本書を読むと、AIは武宮九段より趙治勲さんに似ているのかなと思うようになりました。「生きている石は厚い」という趙治勲の名言をシンプルに体現しているのではないかと。
三々に打ち込む意義は地を稼ぐことにあるのではなく、自分は早生きしてしまい、相手は根拠なく浮いた状態にしたいということなのかなと思うようになりました。
本書でも、特に4章の「守り方」を見ていてそう感じました。
生きていること、繋がっていることの価値を高く判断しているので、趙治勲+今村俊哉と言った感じでしょうか。
次善の選択として外側に伸びやかに配置していることを考えており、それが外勢志向に見えているだけなのではないかと言う気がしてきました。
石を捨てる判断が明晰ですが、それは多少の地合いの問題より弱い石を抱えてしまう負担の方が大きいと思うから捨ててしまうのかなと言う気がします。
捨てるための代償として、気持ちの良いアタリを一つ打てるだけでも十分という判断も、上記に由来しているのかなと思うようになりました。